お話しましょう

お話しましょう

幼馴染時空平子♀と藍染

「んふ、……ッ、ぁ……」

一体どうしてこんなことになったのか、説明できる訳も無いから割愛する。

割愛する代わりに今俺が置かれている状況をかいつまんで伝えるのなら、『彫りの深い男らしい顔と素晴らしい体を持った歳下のおとこに組み敷かれて喘いどる』に尽きる。

事実、さっきから俺は意味のある言葉をほとんど発していなかった。


逞しい肩が荒い呼吸に合わせて上下している。俺を見下ろす瞳がとろりと鈍く潤んだ。そこに込められた感情。

昔の惣右介はあんなにかわいかったのに。ああ、だが、熱に浮かされた瞳から確かに感じる情念は、あの頃から変わっていない。


「んぅ、ん~~~~ッ」

「ふ、ッ……」

急速に弛緩した体をゆっくり横たえられ、抱き寄せられる。気持ちがいい。惣右介の体温が心地良くて、とろとろと眠気がやってくる。

「………真子さん。その、こんなことを今訊くべきでは無いと思いますが、どうしても気になって」

すまなさそう、かつ不審気な目で惣右介が口を開いた。 


「なんや……」

「『初めて』じゃありませんよね」



余りのド直球に目も醒めるというか、どう考えても初夜の余韻で聞く事とちゃうやろ。


「初めてって、なにがや」

「こういうことです」

「……何でそう思うねん?」

「僕は様々な女性と一夜を共にしてきました。だから分かります。あなたの反応の向こうに見知らぬ男の足跡を見た気がして、ああ、これは絶対に初めてではないなと」


え、重た。

コイツの女関係の原因背負わされるん?


「他の女のこと匂わせるにしても、言うな、そういう事お前。時と場所考えろ。今を楽しめや。シンジさんとイチャつくトコやろ」

なんて言葉で誤魔化されず、惣右介はごく真剣な顔を崩さなかった。


「……どんな男性でしたか」

俺の目を見て尋ねる。声こそ穏やかなものだったが、言葉の内容に苛立ちが含まれているのは明らかで、だから何で今、そんな話をせなあかんねん。

変わらない瞳からは怒りの焔が見て取れるが、これは単純に自分の知らないところで他の男と情事を重ねられていたことに対する怒りと考えてもいいだろう。


「遥か昔とはいえ、あなたが僕以外の男性と夜を共にしたいうのは多少の不愉快さは感じてしまいますから、正直に話して頂けると助かります」


容赦なく追い打ちをかけてくる。こいつのこういうところは、小さい頃から本当めんどくさい。

世間では穏やかで誠実な男として言われているが、昔馴染の俺に対してのみ様々な沸点が低いおとこだ。

優秀な死神として再会した時からその片鱗はあったが、このところ目に余る。

俺は吐息を漏らすと、天井を見つめて言葉を発した。

話したくなかったが、こうなると黙っているわけにはいかないだろう。隠し通した所でどうなると言う過去でもないし、どうせバレるのなら自分から打ち明けた方が楽か。

「そうやな、あれは余りにも可憐な少女時代の事やった………」

「意外と普通に始まりましたね」


〜以下、当時のエロ甘トーク~



「…………なんていうことがあったな」

 語り終えると、後には重苦しい沈黙のみが残った。 惣右介は話の途中からずっとうつむいており、その表情は窺えない。 

(こっからケアするん、面倒くさいな)

と思っていると底冷えのする声が寝室の空気を凍らせた。 

「……真子さん、それ、何回あったんですか?」

「四回くらいか?いや、お前と再会する前ええェェ!?」 

惣右介の身体が跳ね上がり、その勢いのまま、覆い被さるようにして組み敷かれる。

「…嬉しいですよ、あなたが素直に答えてくれるだなんて思っても見なかったので」

えらい嫌味ったらしい物言いをするが、惣右介の顔ときたら微塵も笑っていない。殺気に満ちた目に睨みつけられ、斬魄刀を突きつけられたような緊張が走る。

さっきまであんなに幸せいっぱいみたいな顔でシていたというのに急転直下の変貌。

《次はいつ会えます?》

上目遣いで駆け寄ってきた小さなこどもが、こんなおとこに成長するとは。俺のかわいいかわいい惣右介はどこいった…いや、そんなもんは元々おらず、あの頃から歪ななにかを隠して居たのかもしれない。

惣右介がその気になれば、いま、この寝室を血で染め上げるくらいのことはやってのけるだろう。コイツにはその気質がある。

「落ち着け惣右介、話聞いとったらわかるやろうけど、案外身持ちは硬いんや」

「……それもそうですね。だったら今夜、同じだけ相手をしてくれたら、真子さんは許してあげます」 

惣右介はさらりとそう宣うと、目を爛々と光らせ、口の端を吊り上げて凄絶に微笑む。

先ほどまでの殊勝な態度はどこに消えたのか。

(お前も色んな女とシとるやんけって突っ込んだら、あなたに満足して貰えるよう、頑張って練習しましたとか抜かすんやろなァ)


+++++


終わる頃には精も根も尽き果てていた。

腰がだるい。下腹部の鈍痛が情事を思い出させて胸を締めつける。


体力馬鹿か。

四回以上シとるやろ。

何回ナカに出した。


汗やその他諸々で酷い有様になっている寝具の上、同じく体中の液という液を放出しきった惣右介は、倦怠感と疲労感、そこに充足感が満ち溢れている表情で、俺を見上げている。

散々貪りあった後の気だるさを互いに持て余し、視線がかち合っても決して逸らすことはしない。

「…かつての出来事は、仕方のない事です。僕は子どもに近く、あなたは大人に近かった。

しかし、今後他の死神に目移りをするのは立派な浮気です。なので僕だけにして下さいね……あなたを閉じ込めたくないので」

惣右介は滔々と述べると、頬に軽く唇を寄せた。そんな風に素直に言われたら、反論する言葉をなくしてしまう。


「こっちの台詞やろ、それ」

「――真子さん、僕をずっと見ていてくれますか?」

彷徨うように伸ばされた手に指先を絡めてしっかりと繋いでやる。


「惣右介、俺もお前のこと、もっと知りたいわ……

 話してくれるか?『いろいろ』と」




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・何で藍染は『素直に答えた』と知ってるんでしょうね?

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