いい風呂の日

いい風呂の日


良い風呂の日、か。

パーマーと寮の大浴場に行った時だ。

「エースさん、今日何の日か知ってます?いい風呂の日だそうですよ!」

そう教えて貰ったんだ。

そのせいか珍しく入浴剤入りだったな。

あたし、長風呂って言われてんだ。

流石に寮じゃしねえようにしてるけど、今日はいつもより長風呂しちまったよ。


自室でパーマーと二人で寛いでると、温泉の話になったんだ。

「商店街で福引やってるじゃないですか。あれ、特賞は温泉旅行券だそうですよ!

 しかもペアチケット!」

温泉、か……ペアチケットなら、トレーナーさんと行くのもいいな。

「いいな!もし当たったらトレーナーさんと行くか!」

「え、トレーナーさんと行くんですか?」

「あの人、いつも無理してっからな!こうでもしないと、休めないだろ?」

「あ、ああ、なるほど!慰安旅行ってことですね!」

そうなんだよ。トレーナーさんって、あたしのためにいつも無理してっからな。

こうでもしないと休めないからな。

「ああ、でも、あたし長風呂だからな。待たせちまうかもな。」

「トレーナーさん、寝相良いと良いんだけどな。」

「え、一緒に寝るんですか?」

「え?ペアチケットだし2人部屋じゃないのか?トレーナーさんとなら別に良いぜ。

 ちょっと恥ずかしいけどさ。」

あの人のことは好きだからな。別にあたしは気にしねえ。

ちょっと恥ずかしいけどさ。

……あれ、何でパーマー赤くなってんだ?湯あたりでもしたか?


「あのう、多分ですけど、流石に部屋は別々だと思いますよ?」

……あれ、あたし何で勝手に同じ部屋だって思ってたんだ?

パーマーに指摘されて段々恥ずかしさがこみ上げてくる。

風呂から上がって大分立つのに顔が熱くなってくる。

心臓も坂路の後みたいになってる。

たまらず枕を抱えてベッドに蹲る。

「……パーマー。」

「は、はい!なんでしょう!?」

「今言ったこと、忘れてくれ……。」

「だ、大丈夫です!すぐ忘れますから!エースさん、しっかりしてください!」




福引で温泉旅行券を当てるまで、後1月余り。

ひと悶着有るのはまた別の話。

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