あ の さ ぁ
時計読める?もうとっくに日付を跨いでるじゃないか、魔法も解けて無くなる時間だ。どこぞのお姫様に倣って見窄らしい姿をさらす前に、速やかにベッドへ籠もることをオススメするね
満ち足りた僕は睡眠なんて必要としないけれど、君はそうじゃないだろう?
あーぁ、同情しちゃうよ。この僕と違って持って生まれた財産は些細なものだというのに、限りある時間を何の益もなく無為に過ごすだけの睡眠に注ぎ込む羽目になるなんてね。
あまりにも哀れなものだから、夜更かして1秒でも長く人生を謳歌したい気分になるのもわからないでも無いよ
ところでこれは関係ない話なんだけどさ、ずっと前に顔が可愛いから結婚してあげようと思った子が居たんだよ。
なのにあの女ときたら、迎えに来てやった晩から一睡もしないんだ。おかげでせっかく綺麗だった肌もボロボロだし髪はボサボサ、目は血走っちゃってまるで絵物語のゾンビそのものでさ
いくら寛容な僕でも未来の夫のため、美しさを維持しようって気概すらない怠け者の相手なんかまっぴら御免だからね。10割相手方の責任で結婚の約束は破談、破局、お流れだとも
さて、さっきも言ったように申し訳程度でも起きて遊んでいたい気持ちはわかるよ、我欲とかけ離れた生活をしている僕を除いては、目先の誘惑に負けて魔が差してしまうのも仕方の無い話さ
だけど、残念だな。君はもう少し賢いと思っていたのに、馬鹿の二の舞で見た目を損なおうとするのは良くないよね。
式を目前にしてそれはないだろう。夫になるこの僕の気を引こうとしているなら逆効果だよ、駆け引きがしたいならガラスの靴でも持ってくることだね。
…どうかしたのかい。
何の話だって?おいおいおいおい、笑えない冗談はよしてくれ。明日には結婚しようって約束したじゃないか、覚えてないとは言わせないよ。
うん、違いない。だって僕らは、夢の中で永遠を誓った仲なんだから。