〈あれ〉を求めて

〈あれ〉を求めて


【ドナ ! 帰ったぞ !】

「ギイイィ!」

嬉しそうに駆け寄って来たドナの頭を撫でつつ今日の探索で手に入れた戦利品を眺める。

【今日は 図書館から 本を たくさん 持ってきた ! 燃やせば きっと 暖かいぞ !】

「ギィ〜!」

俺の話を聞いているのか聞いていないのか、今日一日会えなかった分の埋め合わせをするようにスリスリと甘えてくるドナ。

俺より大きくなっても甘えんぼうなところは変わらないなと思いつつ油を染み込ませて暖炉へと本を運んでいく。

勝手に持ってきて怒られないのかって?……この街に怒ってくれるやつが存在していればどれだけ良かったことか。

早速燃やそうとした時、何かが落ちたことに気がつく。

【…… ん ? なんだ これは ?】

本に挟まっていたのだろうか?落ちてきたのはどうやらメモのようだ。なんとなく何が書いてあるのか気になり、拾って読んでみたところ驚愕した。

どこかで見たことがある食材、そして穴の空いたリング状の物体の写真……


……これは……まさか……!?


【ドーナツの レシピ !?】

「ギイィ?」

首を傾げてこちらを見ているドナに興奮ぎみに話す。

【ドナ ! 俺達 また ドーナツを 食べられるかも しれないぞ !】

「ギイ!?ギイィ!」

今までは作り方がわからなくて作れなかったが……これなら……!


食材があるのかどうかもわからない、だが時間は嫌になるほどたっぷりとある。それにきっとどこかで生き延びているかもしれない人間と出会うことができればドーナツに大きく近づくことができるだろう。

こんなに明日が楽しみなのは皆と会えることが当たり前だった時以来だ。それが何年前だったのかも思い出せない、だが過ごしてきた記憶は今もはっきりと覚えている。

(また 会いたいな……)


人間へと姿を変え、油を染み込ませた本にライターで火を点ける。

そして大蛇の姿になりドナの隣でとぐろを巻いた。

【明日から 材料 探し 頑張ろうな !】

「ギ!」

本がパチパチと音を立てながら優しく照らしている部屋の中、ドナと共に眠りへと落ちていく。


明日からきっと楽しくなるぞ!

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