ある若妻の心象真理
「…遅い」
すっかり日も暮れたある日の夜、広めの寝室内に置かれたダブルベッドで、モルガンは独り言ちる。
我が夫大好きな彼女が少し苛立ちを感じている原因はそう、愛する夫である藤丸立香の帰宅が遅いこと。
かつて人類最後のマスターである彼と契約関係にあったモルガンは、人理を完全に救ったのち二人の合意で聖杯を使い受肉した。
なぜなら二人は心の底から愛し合っており、たとえ戦いが終わったとしても離れる気が無かったから。
離れてしまうことは二人にとって、何よりも耐えがたい苦痛であったから。
だからこそ受肉して数日もせずに結婚へと至り、こうして熱々な新婚夫婦生活を送っていたわけだが…
「今日我が夫は職場の上役との食事会…
断れとはさすがに言えませんでしたが、それにしたって…
…遅い!」
なぜなら今は夜中の22時半。藤丸が食事会に向かったのは17時。
約5時間。上司が相手とは言え遅すぎる、とモルガンは感じた。
いつもの藤丸は絶対に19時には帰ってくるし、以前の食事会だって20時(ギリギリモルガンの許容範囲内である)には帰ってきた。
だが今日は何の連絡もないし、それを含めた上での22時半。
今日は夜更かししてでも愛する夫とだらだらいちゃいちゃ――もちろんその後のえっちな行為も含めてである――する気だったモルガンはふくれっ面で布団を叩き、やり場のない怒りをどう発散したものかと考えていた。
目元に若干涙をたたえた若妻の声が、窓から見える青白い月にも届かんと響く。
「拗ねますよ、我が夫!!」
◇ ◇ ◇
…時刻は11時を回ったころ。
あれから30分ほどたった室内には、少し前からモルガンのさびしげな甘い声が充満している。
「ふ、ふぅ
んく、ふっ…♡
んんんっ…♡……ぁん♡」
夫の帰りを待ち続ける中高まってしまった劣情はモルガンにどうしようもないもどかしさを与え、その結果モルガンは熱持つ身体を自分で慰めるにしか感情の捌け口を見つけられなくなっていた。
細くしなやかな指が茂みの中を動き、甘くゆるみはじめた蜜壺を抉る。
しかし指先から与えられる快楽は、夫との熱い情事で得られるものよりはるかに…
「ん、んん…足り、ない…
もっと…
やっぱり我が夫の…立香のじゃなきゃ…」
「ごめんモルガン…!
部長がいつもよりノリノリで、そんなにいないつもりだったのにノせられちゃって…!!」
瞬間、寝室の扉が勢いよく開かれる。
そこにあったのはモルガンが心から愛する夫、藤丸立香の姿。
酒だけは飲むまいとしたのか酔いの気配はなく、ただただ申し訳なさそうにしている。
「……ふぇ?立香……?」
帰りを待ち望んでいたはずなのに、いざ愛する夫が目の前に現れると状況が理解できないモルガン。
というか彼女は絶賛自慰行為中であり、今はちょうど奮発してちょっと大きめのディルドを使ってみようと蜜壺に挿入していたところである。
突然の愛する夫に処理落ちしたモルガンの脳にディルドから甘めの快楽が一気に押し込まれ、彼女の理性を消し飛ばす。
「…あっ♡
あっあ゛っ♡
あ゛あぁ゛ぁあ゛ぁ゛ああ゛ああ゛ぁ゛あぁ~~~~ッッッ♡♡♡」
失禁してしまった。
快感を得ようとしていたはずなのにどこかでストップをかけていた彼女の理性が外れたことで、彼女の中で渦巻く劣情が与えられた快感をさらに増強する。
絶頂の波は止まることなくモルガンの体全体に行きわたり、責め苛む。
「えっと…モルガン?」
「…っはぁっ…♡
遅い゛っ♡ですよ…我が夫…♡♡」
状況を理解できない藤丸に、タガの外れたモルガンが近づく。