ある日の姉妹、ただし心は分からずじまい
ある昼下がりの街角、小洒落たカフェテラスに2人の赤髪の女性の姿があった。1人はスレンダーなショートヘアの妙齢の美女、もう1人は左側にサイドテールを垂らした可愛らしい少女だ。見てわかるように2人は姉妹、それも呪術界においては御三家に匹敵する名家と言われる榊原家の呪術師である。その片割れである美女⋯雪音が口を開く。
「それにしてもラッキーだったわ、休みの予定が成華と被ってて。おかげで久々に一緒に遊べるわね!」
少女⋯成華がその言葉に答える。
「う⋯うん、最近は⋯雪音も忙しかったし、久々に一緒に過ごせて⋯私も嬉しい⋯あのクソ家だと邪魔されておちおち話も出来ないし。」
少し興奮した様子で、実家への罵倒のみはっきりとした口調で話す成華。
(無理もないわね⋯あんな家じゃあ)
と、実家の腐りきった内情を思い返しながら考える雪音。ただし成華は雪音ほど厳しい虐待に晒されてはいなかったので、そこだけは幸いでもあるのだが。
「まぁ今日は心置き無く一緒にいられるし、いっぱい楽しまなきゃね!」
少し沈みかけた空気を払うように明るい声で雪音が言う。今日は成華と一緒に一日中過ごせる数少ない時間なのだ、邪魔されてたまるか!と言わんばかりにやる気を漲らせている。その言葉と熱意につられて成華も自然と顔を綻ばせる。周囲の客も思わず目を向けてしまうような可愛らしい笑みに、雪音はニヤつきながら、
「いやぁ、妹がモテモテで私も姉として鼻が高いわ!」
と茶化すように言った。すると成華は、
「そ⋯そんなことないよ⋯こ⋯告白とか⋯されたことないし、高専のみんなだって⋯(傑だって)友達として仲良くしてくれてるし⋯五条以外」
と恥ずかしがるように言った。ただし後半の言葉はさらりと五条への毒を含んではいるが、みんなというよりはまるで1人を思い浮かべているようで⋯、と、そこまで考えて雪音はある少年を連想した⋯誠に癪なことにしてしまった、整った優しげな塩顔に一房の前髪を垂らした少年⋯言うまでもなく夏油傑である。
(むぅ⋯やっぱり成華はあのヘタレ前髪が好きなのかしら⋯この間だって2人きりの時は私や妹といる時みたいな天使な笑顔だったし⋯)
「せ⋯雪音⋯?どうしたの⋯急に⋯?」
少し険しい顔になった姉を不思議そうに見る成華。ちなみに2人きりの時間を目撃したのは夏油に怪しいところがないか、妹におかしなことをしていないかを探るためである、雪音本人が1番怪しいしおかしいことをしていたとか言ってはいけない。そして訝しんだ雪音は、
「ぶっちゃけ成華って前が⋯夏油くんのこと⋯好きなの?」
思い切ってぶっちゃけることにした。
「ひゃえっ⋯、なん⋯なな⋯ななみ⋯何言ってるの雪音⋯!そ⋯そそそ⋯そんなことないよ⋯傑とはあくまで⋯し⋯親友だから⋯そんな⋯す⋯す⋯なんてこと⋯」
顔を髪と同じくらい真っ赤にしながらとたんにいつもの倍増しでしどろもどろになりだした成華を見て雪音は
(あぁこれ確定だわあのガキ今度あったら前髪ちょん切ってやるわ)
と一瞬で夏油のアイデンティティを奪う決断をし、同時に
(というかなんでこんなあからさまにうちの天使に好かれてるのに気づきもしないのかしらあのタラシ朴念仁⋯さっさと告ってクソ実家とかから守りなさいよ⋯!)
と、も思ったが⋯気に食わない上に認めたくないのでその考えからは離れ、絶賛茹でダコ状態であわあわしているオーバーヒート寸前の妹をクールダウンさせるのだった⋯
成華⋯本スレの主人公
大好きな姉と2人でいられる貴重な日に当の姉から特大爆弾を食らった子。個人的にまだ無自覚な方が好みなので、その日1日悶々とした後寮のベットで(親友だし⋯そんなんじゃないし⋯)と自問自答を繰り返して寝不足したりしてる。
雪音⋯成華の姉で階級詐欺術師筆頭
ss主のこの人絶対ドシスコンだろうなという独断と偏見で妹を天使と呼び奇行に走る面白お姉さんになってしまった。ハサミは準備してる。
夏油⋯成華の厄介ファン系前髪
知らない間に高専での生活をストーキングされてた女誑し野郎。前髪を守るために成華と付き合うか前髪を犠牲に厄介ファンでいるか⋯究極の選択を迫られている。
分からずじまい(当人だけ)