ある日の会議風景
此処は人理継続保障機関、フェニス・カルデア。此処には人理を守るため、数多くの魔術師が集められている。
その中でも特に優れた七人の魔術師。彼等は通称、Aチームと呼ばれている。
通路を急ぎばやに歩く人影が一つ。名をカドック・ゼムルプス という。
(くそッ、健康診断が長引いた!会議の開始時間はとっくに過ぎてるな。)
彼の家系が得意とするのは対獣魔術。魔術世界では衰退の一途を辿るこの魔術だが、先人達の獣に対する警戒心が呼び起こされるのか、使用すると結構眠気が吹き飛ぶ。おかげで目の下の隈は消える気配もなく、ドクターには寝不足を注意される。
苛つきながら歩いているとミーティングルームに着いた。扉を開けると、
「遅いぞカドック!!チーム一のエリートのボクの時間を凡人が無駄にするとはどういう了見だ!」
「10分遅刻ね。理由によっちゃ、タダじゃ置かないわよ♡」
「ククク…時空の狭間の迷い人よ。貴様の来訪により、我の刻は今再び動き出すだろう!!!」
「遅かったじゃねぇか、カドック。ほら座れ、今紅茶入れてやる。」
「…………………(ガン無視)」
帰りたくなってきた。コイツらはいつもこうだ。チーム一番の出来損ないの俺をいつも馬鹿にする。キリシュタリアやペペロンチーノなんか分かりやす過ぎていっそ清々しい程だ。
「…紅茶はいらん。さっさと始めろ。」
中でも特にムカつくのはーーーーー
「おい、会議ぐらいまともに参加しろ。サボるなグズ。」
「…………すまない。」
デイビット。今まで部屋の隅で体育座りしてた奴だ。
俺に言われたからか、ビクビクと自分の席に座る。そんな様子を見てペペロンチーノはうすら笑い、キリシュタリアはイラついたように舌打ちをする。既に半泣きだ。
会議はキリシュタリアを中心に滞りなく進んだ。皆が意見を述べていく中ベリルがデイビットに声をかけた。
「デイビット、お前はどう思う?」
「…………所感でいいか?俺ならーーー」
怯えながらも自身の意見を述べるデイビット。その内容は普段の様子から想像がつかないほど優れている。
(クソッ、なんでこんな奴なんかに…!)
デイビットはこのチームの中で一二を争う天才だ。前所長マリズビリーの評価は『最も優れたレイシフト適合者』。
天才の癖に、いつもビクビクして自信がなさそうにしている。……本当に腹が立つ。
会議が終わり、デイビットは真っ先に部屋を出ようとしていた。
「おい待てお前。」
「…………なん、ッ!!ガハッ!」
振り向いた瞬間鳩尾に一発。もろにくらったデイビットは、目に涙を溜めながらうずくまっている。
「ムカつくんだよお前。天才だかなんだか知らねぇけど目障りなんだよ。」
そう言って俺は会議室を出る。後ろからデイビットを心配するベリルの声や、デイビットへの不満が爆発したキリシュタリアの怒声が聞こえるが知ったこっちゃない。
あぁ、本当に腹が立つ。いつも自身なさげなアイツの態度が。
ーーーーそんな奴にどう足掻いても敵わない自分自身も。