ある愚かな研究員達の話
PX-UTAについて少し話をしよう。
元々PX-UTAは現在運用されているパシフィスタのプロトタイプとして制作された。
元々ベガパンクはウタウタの力を持つ人間を改造人間にし世界平和に貢献しようとしていた。
しかし、彼は気がついた。
世界平和のためにこれ一体だときつくね?あれつーかこれ悪魔の実の量産ができないと無理だな。
これに気がついた彼は直ぐに計画を中止し、パシフィスタを別の形に完成させることを目指した。
ここで、ベガパンクはミスを犯してしまった。
――破棄する予定の計画書を別の研究員...よりにもよってシーザー派の研究員達に渡ってしまったのだ。
シーザー派の研究員達は少し前にシーザーが追い出され自分達の扱いが悪くなっていたことに不満を持っていた。
そんな彼らに計画書が渡るとどうなるか?
答えは簡単だ。
ウタウタの能力者を見つけたら、この計画を実行し、ベガパンクを見返してやる。
彼らにはそんな気持ちがあった。
もしこの場にシーザー・クラウンがいたら、彼はこう言うだろう。
『ベガパンクの野郎の計画書があっただぁッ!?捨てろ!!そんなもん!!俺はぁそんなもの頼らなくてもアイツ以上の兵器を作れる!!!』
しかし、彼らはシーザーじゃない。そんなものは彼らにとっては知ったことではなかった。
しかし、この計画にはある欠点があった。
まず改造の元となる人間がいないのだ。
そちらを探さなくては始まらないのだ。
...このまま見つからなければそれで良かったのだが、なんの因果かベガパンクの試作品によって彼らは気づいてしまった。
『みんな!ウタだよ!!』
SSGという電伝虫を使った配信ライブ。
彼らはそれにより彼女がどこにいるのかが分かった。
彼らは計画の準備を行い、そして実行した。
――計画は成功した。
エレジアにいた歌姫を連れ出し、人質を盾にすることでPX-UTAの改造に協力させ、成功した。
そこからはまさに激動の数ヶ月だった。
実験という名の非加盟国の住民虐殺、政府公認の歌姫としての広告塔等、様々な役割で多くの成果を上げ、ついに彼らの地位はシーザーが在籍していたときよりも上がった。
『順風満帆』
今の彼らにはそんな言葉が似合うほどすべてが順調だったのだ。
だが、それも長く続くことはなかった。
五老星が彼らにある命令を下した。
現四皇麦わらの一味のモンキー・D・ルフィ、及びニコ・ロビンの暗殺。
それが彼らにくだされた命令だ。
この計画が成功すれば、彼らはベガパンクよりも上の地位につくことを教えてくれた。
彼らは歓喜した。
いつもどおりのことをするだけ。
彼女が歌い、後は同士討ちをさせる。
それで終わる簡単な仕事でベガパンクよりも上の地位につけるのだから。
そのはずだった。
「PX-UTAに反応がありません!!完全にオーバーヒートを起こして倒れてます!!!」
「歌だけでも歌わせないのか!!それが終われば我々の勝ちだぞ!!!」
「駄目です!!応答がありません!!!」
「馬鹿な...」
―有り得ない
ここまで順調だったのに
―有り得ない
ここに来るまで色んな奴らに根回しをしたのに
―有り得ない
なぜ、ここにきて失敗を!!
「長官!!上を!!」
仲間の一人が上に向かって指を指した。
呼ばれた彼は忌々しく上を見上げる。
「.....は?」
そこにあったのは拳だった。
軍艦の何十倍もある拳が空から降ってこようとしていた。
そして拳の先にあったのは
「......」
怒れる白き四皇の姿だった。
「まっ――――」
彼の言葉は続くことはなかった。