ある呪詛師の日記

ある呪詛師の日記


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2018年 4月〇〇日 △曜日

自分の気持ちを整理したいから、今日から日記を書こうと決めた。


あれから3ヶ月が経った。

あの一件以来、私は高専と距離を置くようになった。

私はあの日、人を助ける事に疑問を抱いてしまった。

今まで意味もなく、理由もなく、ただ「そうしたい」から助けてきた。

人を助ける事が、生き甲斐だった。

でも、今の私は違う。



自分の甘さが嫌いになった。

自分の優しさが嫌いになった。

私は、私自身が嫌いだ。


私は最低だ。2年生の皆。高専。家族。術師としての役目。

その全てから、逃げた。


逃げた先では色々な事があった。

特に衝撃だったのは、特級呪霊4体と協力関係を結ぶことができた、ということだ。


でも、何より辛かったのは。

私は、私は人を(吐瀉物で汚れていて読めない)



8人。

8人、殺した。

怒りのままに、憎しみのままに、この手で撃ち殺した。

こんな事のために呪術を使いたくはないから、ただの銃を使った。

辛い?ふざけるな。それを分かった上で選んだんだろう。

私の苦しみなんてちっぽけなものだ。

とにかくこれでもう後戻りはできない。

私は私のできることをやるだけだ。


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2018年 ✕ 月 〇日 □曜日

いつの間にか、私に命を救われた人たちが集まって教団を作っていた。

人数は20人。私は知らず知らず、彼らを巻き込んでしまっていた。

彼らは私の事を「神様」「救世主様」などと呼び崇め奉っている。

特に神格化しているのは櫟井千早さんという人。地下アイドルだったらしく、とても綺麗な人だ。

だからこそ、その美しさを汚してしまっているようで心苦しい。

私はそんな大層な人間じゃない。ただのクズだ。

呪詛師になってから32人殺した。3ヶ月間の8人と合わせれば40人になる。

悪人とはいえ大勢の人を手に掛けた。

「神様」なんて、呼ばれるべきじゃない。


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2018年 〇月 ✕ ✕ 日 △曜日

修羅達ではない別の特級呪霊が尋ねて来た。

彼らが言うには「渋谷で大規模な呪術テロを起こす」らしい。

本当ならこれ以上被害が出る前に祓いたいがそうもいかない。

大規模テロ…渋谷事変の計画には乗るフリをした。被害が大きくなることは確実だろう。

可能な限り被害の拡大を食い止める。それが今の私にできることだ。


…この期に及んで、まだ術師の真似事をするつもりか。

私は…何がしたいんだろうか。


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2018年 10月31日 〇曜日

いよいよ渋谷事変当日がやってきた。

私たちは計画通り、可能な限り一般人を助ける。

教団の人達には来ないよう頼んだが、結局巻き込むことになってしまった。申し訳なさで一杯だ。


改めて、私の決意をここに書いておく。

今更逃げたいとか、楽になりたいだとか、そんな事を言うつもりはない。

私は私の選んだ道を行く。

例え正しくなくてもそれでいい。

私の醜く歪んだ願いが叶う日まで、止まるつもりはない。

それが、私に課せられた呪いだから。























(最終ページのようだ 日記はここで途切れている)

20〇〇年 △月✕ 日 〇曜日

この日記が最後まで読まれたということは、私は捕まったか死んだのだろう。

誰かがこれを見ているなら、乙骨憂太、狗巻棘、禪院真希、パンダ、五条悟、名無真太郎の6人に一言伝えて欲しい。




今までの人生に後悔はない。

だけど。

叶うなら、もっと一緒に居たかったな。


ごめんね。

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