ある冬の夜
道化ちゃんある冬の日の夜更け
フォル「王様王様王様〜そろそろ、お茶でもいかがですかね?王様!今夜はとても冷えます、暖かくして少しお休みになられては?」
マグ王「あぁ…もうこんな時間か、そうだなこの書類をまとめたらそうしよう」
フォル「それでは私めは、お茶を入れてまいります、お茶請けは?」
マグ王「そうだな、甘いものがいい」
フォル「この時間に甘いものとは!ギルティですな〜」
マグ王「フフ だがそれがいい、そうだろフォル?一緒に罪をおかそうじゃないか」
フォル「ヘヘッお供させて頂きやす、何処へなりとも、何であろうとも」
と仰々しくお辞儀をし、お茶を入れにキッチンに向かう
お茶を入れ、クッキーやフィナンシェ、マフィンにスコーン等々を少しづつ用意しトレーに載せる
おまじない程度の、ささやかな魔法は使えるので、ほんの少しでもリラックスできるようにと願い、用意したものに癒しの魔法をかけ王様の元へ運ぶ
フォル「お茶をお持ちしましたよ〜当然もうお仕事は片付いてますよね」
マグ王「あぁちょうど終わったところだ、すぐに片ずけよう」
フォル「では、テーブルと椅子を持ってまいります」
と言いかけた時、王はサッと手を振る
すると、テーブルとイスがひとりでにこちらにやって来て、整列するようにひとりでにセッティングされる
そこに持ってきたものを並べる
フォル「流石です王様」
マグ王「これくらいなんてことは無い」
フォル「はぁ…あぁ冷めないうちにどうぞ王様」
マグ王「では、いただくとしよう」
優雅に腰をかけ、お茶を飲む姿はとても美しい
マグ王「どうしたフォル?せっかくのお茶が冷めてしまうよ」
フォル「あっそうですね、では私めも失礼して」
と向かいに腰掛けお茶を啜る
マグ王「フォルが入れるお茶は、やはり美味いな…それに、素晴らしい魔法がかかっている」
フォル「魔法なんてそんなおこがましい…まじない程度のものですよ」
マグ王「そんなことは無い、とても優しい魔法だ」
そう言いながら、愛おしそうにカップやお菓子を見つめている
フォル「ヘヘ…ありがとうございやす」
フォル「《あぁ王様》大好き…」
王様は少し驚いた顔をし
マグ王「久しぶりに聞いたなその言葉」
思わず盛れ出てしまった言葉、声に出てしまっていたらしい、とは言っても聞こえるか聞こえないかぐらいのはずなのに…
フォル「…そうでしたかね」
マグ王「ああ、昔はよく言ってくれていたではないか、最近は全然言ってくれなくなって寂しく思っていたのだ」
フォル「嫌ですね、それは私めがとても小さい時の話でしょう、王様もお年も召されたみたいで、感傷に浸るようになったのですか?」
マグ王「そうかもしれないな、フォル君も大きくなった、私も歳をとるはずだ」
愛おしそうな笑顔で、そっと僕の頭を撫でる
フォル「……やめてください」
マグ王「ああ!これは、すまない!君もそういう年頃だったな、つい寂しくってな」
フォル「王様は寂しんぼですね、私めは、いつでも、いつまでも王様をお慕い申し上げておりますよ」
マグ王「……フォル、2人でいる時くらい道化は辞めたらどうだい?」
チャロ「ちょっと!私もいるんだからね!」
とヒョッコリテーブルの上に顔を出す
マグ王「これはすまない、3人だったな」とチャロの頭を撫でる
フォル「…ハハッご冗談を、道化師は王様を楽しませるのが仕事です、王様が王様でいる限り道化師は年中無休でごさいますよ」
マグ王「そんな寂しいことを言うでない、私はフォルトゥナ君と話がしたいのだ……私は寂しんぼだからな」
そうニヤリと笑いながらサッと手を振り魔法で僕のメイクを落とす
マグ王「せっかくキュートな顔をしているだ、たまには見せてくれてもいいだろ?」
フォル「……王様、僕は!」
マグ王「まぁ私には適わないだろうがな」
とウィンクし、キラキラと光り舞い踊る蝶のようなものを出し笑顔を見せる
マグ王「チャーミングだろ?」
フォル「フフフそうですね、とても素敵です」
マグ王「そうだろう!私はハンサムな王様だからな」
フォル「はい、とてもハンサムで努力家の優しい賢王です……ですがもう少しご自愛くださいませ、少々多忙がすぎますよ!弟子をとられてはいかがですか?」
マグ王「ハハこれくらいなんてことは無い、大丈夫だ。それにいつもフォルが手伝ってくれているだろ、とても助かっているよ」
フォル「お役に立てて光栄です、ですがやはり弟子は必要かと」
マグ王「そうだな……私も永遠に生きられる訳では無いからなフム…募集を出し、何人か育てるか……そうなるとほかの役職も必要かもしれないな、検討しよう」
フォル「そうしてください……あと、健康で長生きもしてくださいね!」
マグ王「あぁ…フォルトゥナ君の将来も見届けなくてはいけないからな」
フォル「僕はいつまでも王様にお仕えしますよ」
マグ王「気持ちは嬉しいが……私は君の幸せを願ってるのだ」
フォル「僕は今のままで十分幸せですよ」
マグ王「そうは言ってもな……あぁそうだ、フォルトゥナ!好きな人や気になる人の1人や2人いないのかい?」
パチンと薪が爆ぜカタリと崩れる音がする
フォル「ッツ…そんなの!……そんな人いませんよ、いや〜そのハハッ王様が素晴らしすぎて他の人にあまり魅力を感じないのです」
マグ王「……そうか、いつも忙しい私に付き合っているからな、出会いのきっかけが無いか……もっと休みを取って街で遊んでくると
フォル「僕から!……僕から仕事を取らないで下さい…僕にはこれ(道化師)しかないんだ!」
マグ王「フォルトゥナ?」
フォル「僕にもっと魔力があれば、もっと役に立てたのに!もっと頭が良ければ宰相になって政務とか手伝えた…僕が本当の……本物の男だったら騎士に………僕は…私めは道化師です、王様を楽しませるのが仕事、僕から楽しみを奪わないでくだせェませ」
悲しそうな苦しそうな笑顔で笑っている
マグ王「フォル
チャロ「ちょっと!!いくら王様でもそんなこと聞くなんてセクハラよセクハラー!サイテー」
マグ王「なっ!!…すまない!そんなつもりはなかったんだ。しかし、そうだな少々デリカシーにかけていたすまない」
チャロ「ほんと、失礼しちゃうわ!行きましょフォル」
しかし俯いて反応がない
チャロ「フォル?フォル!フォルトゥナ!!」
フォル「エッ…あっ、なに?チャロどうしたの」
チャロはそっと耳元来て小さな声で囁く
チャロ「薪が無くなりそうよ取りに行きましょ」
フォル「あっ!本当だ、王様ちょっと失礼して薪を取って参りますね」
と去っていく
部屋から出て少しして
フォル「ごめん…ありがとう、チャロ」
と撫でる
チャロ「いいのよ、私はいつだってフォルの味方だからね」
スリスリと頬に擦り寄る
フォル「うん…」
部屋に取り残された王様は1人呟く…
マグ王「そんなことは無い、私はいつも助けられているよフォルトゥナ…君がいつも私を支え、私が言えない事を代弁し、嫌われ役をやっていてくれるから…それを諌めることで場を落ち着かせることができ、民慕われる王でいられるのだ……」