ある×先生
……私は先生であるべきだ。
誰がどう言おうと、彼女たち生徒にとっての正しい大人であるべき。
それは、私がこのキヴォトスに来てから今まで、変わっていない。
変わっていない……。
その、はずだ。
けれど……。
私は、今日送られてきたモモトークに添付された写真に目を落とす。
二つ。
一つ目はアルから送られてきた風紀委員を打倒したわという写真。
便利屋と風紀委員のメインメンバーが比較的仲良く、ご飯を食べている。
少なくとも数日前なら考えられないことだろう。
なにせ、便利屋に彼女たちが襲撃を行った件は、シャーレにも届いていた。
最初は動くべきか考えたけれど、私が動く前にヒナ、アコ、それにアルからもそういうことを想定した演習訓練であったということが書かれた連絡が届いていたから、心配はしていなかった。
だからきっと、それは、祝勝会。みたいなものだったのだろう。
でも、次の写真。
アルからではなく、ムツキ、それにヒナから送られてきた写真は、私の心を揺さぶった。
中央には、少しだけ、居心地の悪そうなアル。
けれど、問題は彼女では、ない。
隣にいる、マイクロビキニの二人の少女。
ムツキとヒナ。
二人はおそろいの、見覚えのあるバラのマークを象ったチョーカーをはめて、挑発的に、カメラに笑顔を向けている。
後ろにも、恥ずかしい恰好をした便利屋と風紀委員の子たち。
二人ほど堂々としていないのか、カメラから目線はそらしているが、それでも、その場がどういうことか、理解している表情だ。
二人から来た文面は、同じ。
恐らく、私と、アルのしたことにも気が付いている二人。
「「おいで」」
先生として、私は、行くべきではないのだろう。
あぁ、あるいは、今すぐにでも言って、生徒を導くものとして、アルを、その周りの少女たちをしかるべきなのだろう。
きっと、そちらの方が正しい。
だから、私は、迷いなく新しいオフィスとなった、便利屋に足を向ける。
中に入れば、便利屋のメンバーと、風紀委員の主要メンバー。
その誰もが、当然といった表情でそこにいて、入ってきた私をじっと、見つめている。
その中でたった一人だけ、アルだけが私の顔を見て、表情を変える。
どう行動するか。
そんなことは、決まっている。
私は、アルの前に、跪いて、見上げる。
「……私にも、ください、……みんなと、いっしょの、印を」
そう、だって、決まっているじゃないか。
私は、彼女にとっては、生徒ではなく【ご主人様】なのだから
私の、まだ、誰も迎えていない。
この中で一番未熟な私の奥が、彼女に見下ろされている。それだけで、きゅんっと、うずくのだった。