ある一般女性の場合。

ある一般女性の場合。



「厳正なる審査の結果、あなたは選ばれました今日からあなたは——」

そう紡がれる綺麗なソプラノの声を聞いた瞬間、苦痛に意識を塗りつぶされた。

生きてきて20数年間上げたことの無いほど絶叫を上げ、手当たり次第にもがき暴れた。そんな抵抗を嘲笑うように内側の骨が軋む嫌な音が悪寒とともに襲い掛かる。

苦痛を訴える叫びは最後に知らない声へ変わって、途絶えた。

目を開けた時、わたしが見たのは無数の真珠をぶち撒けたような星空だった。

何とか起き上がり、辺りを伺うと見渡す限りの砂の海。

「…ここ何処…? 鳥取砂丘…?」

わたしは関東近郊在住のはずなんだけど。

そして身体の違和感。全身にスーツを着せられ何かを被せられている。顔のある辺りをペタペタと触るとヘルメットに似た硬質な感覚があった。これじゃ夢じゃないかなと頬を思い切りつねりたくても出来やしない。

妙に高い視界も落ち着かない。身長が著しく伸びているみたいだ。わたしがわたしじゃない。この身体はどういうことだ。

またあることに気がつく。

わたしの名前が思い出せない。

ただ苦痛に塗りつぶされる前に聞いた名前だけが頭にあった。

「仮面ライダー…ゾルダ」

恐らくそれが、今のわたしなんだろう。


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