あるモブウマ娘の述懐

あるモブウマ娘の述懐


トレーナーさん、こんな噂を知ってますか?

『白い服を着た黒髪のウマ娘が、ケタケタ笑いながら

 ブリッジの体勢で坂路を走っている』

……いや、本当にそんな噂があるんですよ。ギャグじゃないです。

で、なんでそんな噂の話をいきなりするのか、ですか?


……実は私……見ちゃったんです、そのウマ娘を。


昨日、寮に戻ってからグラウンドに忘れ物をしちゃったことに気付いたんです、私。

朝練の時に回収してもいいかなって思ったんですけど、まだ門限前だったので、

同室の子について来てもらってグラウンドに戻ったんですよ。

忘れ物自体はすぐに見つかったので、すぐに戻ろうと思ったんですけど……

その時です。

坂路から聞こえたんです。笑い声が。


私たちもバカですよね。

行かなきゃいいのにわざわざ坂路の上の監視塔に行っちゃったんです。

そしたら……いたんですよ。噂のウマ娘が。

チームカオスにギャラントクイーンっているじゃないですか。

この前福島記念を勝った子です。

あの子がケタケタ笑いながらブリッジの体勢で

坂路をものすごいスピードで走ってたんです……!

もちろん、その場から猛ダッシュで逃げましたよ、ええ。




「……っていう話をうちのチームのトレーナーから聞いたんだけどさ」

「待って、ギャラ子目ぇ開いたまま気絶してる!担架!担架持ってこーい!」

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