あるほし身体測定

あるほし身体測定


「アルちゃん、背のびた?」


「……?そうかしら」


ある日、ムツキにそう言われて、少しだけ意識してみる。


確かに、服がきつい

胸元もだけど、それ以上に全体的に……


「……まぁ、まだ成長期が続いてたんじゃない?」


思い返してみれば一年前の私はずいぶんと小さかった。


そこからもう少しくらいなら伸びてもおかしくない。


ちょっと遅い成長期なら、なおさらだ。


「んー、まぁ、そうかも。でも、……服買わないとかっこ悪いよ?」


「……そうね、貯金にもう少し余裕が出たら一気に揃えましょう」


そう、笑っていられたのは、このころ辺りまでだった。



「……不味いわね」


そんな会話をしていたのが、二、三か月前だったと思う。


便利屋も休日で三人が出かけた後、私は衣装棚から服を取り出して眺める。それは、少し前まで来ていた、普段着であった。


だが、今やそれらは、どれも私には身に纏えない。


……私の成長期は、予想の範疇には収まってくれなかった。

特に鍛えてはいないのに、ちょっと体は引き締まったのはいいけれど……。

体の部位が、どこも、大きくなって。


……服が着れない。

いや、こうなる前に気が付くべきだったといわれればぐうの音も出ないのだけれど。


「一応、このジャージは何とか入るけれど……」


ブラも入らないから、地肌に擦れるシャツの感覚に違和感を覚えながら、なんとかジャージのジッパーを上げる。


「……閉まらない」


どれだけ頑張っても胸のところで止まってしまう

以前、晄輪大祭の時のハスミをみたことがあるけれど、もしかして、そのレベル……?


「考えても仕方ないわね……」


そのまま、着の身着のまま。

私は外へと出た。


改めて辺りを見回せば。

世界は小さくなっていた。


一度しっかりと認識してしまえば、それはよりしっかりと理解できる。


思い出してみれば、よく今まで気が付かなかったものだ。

アコには一か月くらい前から見上げられていたし、ハスミのおでこに特に背伸びもせずにキスをしていたのだ。


「……うわ、自販機よりもしかして高い?」


ちょっとだけ、近づいて自販機と背比べをしようとして……立ち止まる。


ちゃんと比べようとしたら、胸が自販機にくっついてしまいそうだ。

それ自体は別にいいけれど、残念なことに、自販機のディスプレイは相応の時間放置された影響で少しだけ汚れている。

今、そんなに近づいたら服を買いに行くのにみっともない恰好に……


いや、今でもかなりみっともない気がするけれど……。


「……あら?」


そんな風に、私が自販機とにらみ合っている時、そのディスプレイに反射して小さな影が見える。


「……ホシノ?どうしたの?」


ちょっと呆然としていたのか、普段ならすぐに気が付いていただろうに、私に話しかけられて、彼女はようやく反応を示す。


「うへっ、あ、アル?だよね?」


「あぁ、ちょっと、感じ変わっちゃったものね」


「……ちょっと?」


「やっぱり、一杯かしら」


前までは、胸元くらいにいたホシノの姿は、私の胸元にさえぎられて見えなくなってるし……。


「私、どれくらいおっきくなったのかしら……」


「……じゃあ、ちょっと、私についてきて。身体測定、しよっか」


「……そうね、お願いしようかしら」


服を買うのにサイズを知らないといけなかったし。

渡りに船と私は、ホシノの誘いに乗るのであった。





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