あるひなほんぺん

あるひなほんぺん


「意外だった?」


シャワーを浴びて待っているヒナは私にそう問いかける。


「……天下の風紀委員長が、未成年との淫行に及ぶってことなら」


隣に腰かければ、しっかりとベッドは私の体重を受け止めて沈む。

外を見れば、学園都市であるというのに夜の街は、煌びやかに世界を彩っている。


イオリを連れ込んだ宿よりも、二つ、上のランク。

彼女の支払いで連れ込まれたそこは、間違いなくスイートクラス。


「お金、忙しくて使う暇がなかったから」


そういって見せられたカードは、確かにキヴォトスでもトップ層のみがもつとかいう噂の真っ黒なカード。

学生証にもたんまりと入っているだろうに別口に用意するのは。……まぁ、こういった所のためなのだろう。


「いっておくけれど、私も初めてよ」


「それは、疑ってないわ」


少なくとも、各学園のトップの情報は、嫌でも耳に入る。

どれだけ隠そうとも、彼女がそういったことに及んだのならば次の日には話題になるだろう。


「……つまり、私とも、明日噂になるということだけれど」


実際、軽い変装すらしていなかったからホテルの受付は大騒ぎだった。

私も。けれどそれ以上に彼女の存在はゲヘナ。いや、キヴォトスにおいては重要な要素になっている。


「問題ない。理屈が立つから」


「理屈?」


「えぇ。どれだけやっても、私の敗北には違いないもの」


つまりは、自分も掛けのチップにした。ということにするつもりなのだろう。


彼女は風紀が勝つ。私は、自分たちが勝つ。

負ければ組織の長が、一夜だけ自分のものになる。

普通の組織であれば、受けたりはしないそんなギャンブル。


だが、知っているものならこういうだろう。


あの便利屋なら受けかねない。


「いけない子ね」


軽く、抱き寄せて。

口づけをする。


小さく、くぐもった声。

そして、軽く私の体をおして離れる彼女。


「……違う」


「あら?」


「……イオリやアコから聞いてたのと、違う」


少しばかり不満そうな彼女の顔。


「……それは……」


イオリの時は、性欲の暴走だったし、アコの時は調教の意味もあった。

けれど、今は……

そんなことを、考えてる私の服の袖をヒナは弱い力で引っ張る。


「……シて」


見上げる彼女の瞳……。


「……めちゃくちゃに、されたいの」


よく考えれば、異常だった。

いくら、私を買うつもりだったとはいえ……。

何の交渉もなく出すには、あまりにも高い前金。


これは、恐らく彼女の悲鳴だ。秩序を守ってきた彼女の、あまりにもか細くやけっぱちな、小さな悲鳴。

壊れそうな彼女の心はそれ故にこんな倒錯的な、壊されるような愛を求めている。

それに対して、……彼女についてあまりに何も知らない私は。


「あとで、後悔しても、知らないわよ」


「……えぇ、期待してるわ。便利屋さっ……んっむっ……♡」


食らうように、彼女の薄い唇に、自分の唇を重ね、舌先をねじ込む。

どうにもわからないけれど、私は、これが上手いらしい。


暴力的に、圧倒的に蹂躙する、支配の口づけ。

先ほどのように押しのけることはなく、小さな彼女は細い腕を私に回して逃さないように抱きしめる。


そんな彼女の肩をつかんで、ベッドへと押し倒す。


「大丈夫、すぐに、そんな口、叩けなくしてあげるから」


熱を持った自分のふたなりを、彼女の幼い肢体に触れさせる。


「精々私の下で、かわいらしく踊って頂戴。小さなひな鳥さん」


そして、そのまま、容赦なく彼女の割れ目へと肉棒を入れる。


途中で膜の感覚があるけれど、そんな守りは、私の大槍の前では薄紙のようなもの。


一瞬だけ、彼女も痛みに顔をゆがめそうになるけれど、そんなものは持続しない。


「~~~~~」


「へぇ、そういう顔するのね」


突き上げたところは、彼女にとっては一番感じるところだったのだろう。

普段の仮面はどこへやら。そこにいるのは可愛らしく、与えられる快楽に身をもだえている一人の少女。


「っ、腰、はやっ……」


見たくなってしまったのは、恐らく、私の本性なんだろう。

ゲヘナで一番強い彼女の、幼い少女としての顔を。


「っ、やっ……♡だ、めっ♡」


「やめてほしいの?」


限界から来た、言葉に、私はわざとらしく彼女の耳元でささやき、速度を落とす。

ここまで攻め続けられてきたヒナには、これが一番つらい。


すぐにでもイってしまいそうだった快楽を取り上げられる。

そして、代わりに与えられるのはわずかにそこから離れたところをゆっくりと擦られる愛撫のような攻め。


「っ、やだ♡もっと、きてっ♡」


そんなもの、今の彼女に耐えられるはずもない。

求めて、求めて、しがみついて、求めてくる。


口だけじゃない。

彼女の、まだ使われたこともなかったそれも、私のふたなりを離すまいときゅうきゅうと締め付けている。


「心配しなくても、ちゃんと満たしてあげるわ」


彼女が何故そんなに不安に駆られているかは知らない。

けれど、強くて、孤高の風紀委員の姿が彼女が立つための仮面なら。


「ほら……壊れて?かわいいひな鳥さん。私の腕で、鳴いてごらんなさい?」


砕いて、壊して。さらけ出させる。


だって、強さなんて、求めてないんだもの。

私も、貴女も。

買われた私に請うた貴女。


「楽しまなきゃ、駄目。わかるわね?」


「っ、うん……♡アルっ」


そのまま、彼女の体の負担など、お構いなしに突き上げる。

小さな体だ、最奥にたどり着くなんて簡単で、その奥をぐりぐりと先っぽで責めてあげれば、苦しそうに声を漏らしながらも蕩けた表情を浮かべて快楽をねだる。


「もう限界なんでしょう?ちゃんと、見ててあげるから……」


こくん、こくんっと受け止めきれない快楽に小さく何度もうなずきながら、彼女は、私を求めてくる。

まるで、小さな小鳥が、餌を求めるように、小さく口を開けて。


「ほら。……イきなさい」


そんな彼女の誘いに乗って、もう一度唇を重ね……。

ヒナは、達する。締め付けに応えるように、私も彼女の中を白く染めて。


私の熱が、彼女の中を満たしていく。


「はぁ♡はー♡」


小さく、満足げにヒナは息を吐く。

どれだけやっても満たされなかった中身が満たされていくようなそんな感覚を味わっているのだろう。


「ね、ぇ……ある♡」


私は、言葉を紡ごうとした彼女の唇を、もう一度キスで塞ぐ。

何秒か、彼女の舌先の抵抗をねじ伏せて、深く、ディープな口づけを交わす。

その抵抗がなくなって、私が体を離せば、私と彼女の間に細い唾液の橋が架かる。


そこにいるのは、とろんっとした瞳で、蕩けた顔でこちらを見上げてくる、全てを差し出し、砕かれた。

空崎ヒナという、肩書のない女の子だけ。


「大丈夫」


ちゃんとあなたが、もう戻れなくなるくらいに壊してあげるから。


「まだ、夜は始まったばかりでしょう?」

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