あるとゆうか
「ここ、です……」
ミレニアムのセミナーの会計。ユウカ
彼女が案内してくれた一つの部屋についた私は、ひとまず彼女をなだめることにする。
「怯えているの?」
私の呼びかけに、分かりやすいくらいにびくっと、彼女はその小さな体躯を……
いえ、カヨコとおんなじくらいはあるわね。
……体が大きくなってからは、そういう感覚がマヒしてしまった自覚はある。
周りの何もかもが小さく見えてしまって仕方がない。
けれど、それ以上に、小さな相手を落ち着かせる方法も体に染みついた。
「大丈夫よ、ほら、……落ち着いて」
彼女の体を包むように覆いかぶさり、そのまま手を重ねて、ゆっくりと優しく声をかける。
「呼吸が浅いわ。少しずつでいいから、深く吸い込んで?」
ユウカの緊張で浅かった呼吸が、少しずつ、落ち着いてくる。
その間は、彼女に対して大きなアクションは取らない。
今の彼女にとって、私は恐怖の対象だ。
それが、駄目というわけじゃない。私も、無理やりにことに及ぶことはいくらでもある。
私と敵対する子はちゃんと教え込まないと大抵後で問題を起こすし、なまじ腕のある子だと上下への文句を言ってくるものだ。
だからそういう時は、徹底的に抱きつぶして、私の物だっていう自覚をするまで許さないこともある。
けれど、今回は違う。
きっかけとしては、モモイって子の行動だけど、私はそこまで怒っていなかった。
でも、彼女にとっては恐ろしかったのでしょう。
分からなくは、ない。だって、私はもうゲヘナとトリニティ、アビドスと続けざまに学園を食らってしまった。
生徒会の彼女からしてみれば、ミレニアムをめちゃくちゃにされると。そんな思いを抱くのは当然。
「……落ち着いた?」
一分か、二分か。
そう長くない時間ではあったが緩やかな時間が流れ、呼吸が整ってきたのを見計らって声をかける。
「……はい。ありがとう、ございます」
返ってきた返事は、決して明るいものではないけれど、それでも、無理をして出すものではなかった。
声の震えも少しだけ落ち着いてる。
これなら、大丈夫
「こっちをむいて?」
覆いかぶさるのをやめて、少しだけ離れて、ユウカに声をかける。
一瞬、ほんのわずかに体をこわばらせたものの、彼女の体は、ちゃんと私の方へと振り向く。
そんな彼女の顔を見つめる。
可愛らしい顔立ちだ。ツーサイドアップにした青い髪がよく似合う。
「キスは、初めて?」
そんな彼女の顔をなでながら、ゆっくりと、声をかける。
「……」
こくん、と、小さくうなずく彼女の返事。
「そう」
なら、しっかりと、味わってあげないと。
軽く顎を持ち上げて、彼女の体を軽く抱き上げて、唇を重ねる。
一秒、二秒、三秒。
優しいキスを、彼女にしてあげる。
そして、四秒目を数える前に、ふわりとはなれる。
「どうだった?初めてのキスの感触は」
「……よかった……です」
「ふふ、それはよかったわ」
「……その、意外、でした。噂……その凄かったから、もっと、乱暴にされるかと」
「だって、あの子たちと貴女は違うでしょ?」
優しく、優しく、彼女のことを肯定しながら、彼女を抱きしめてあげる。
彼女の体に張り巡らされていた緊張がふっと解ける。
「だから、……じっくり優しく、食べてあげる」
え?と、少しだけ、呆気にとられた表情をする、腕の中の少女
そんな、かわいらしい顔をした彼女に、再度唇を重ねる。
……今度は、本気。
舌を入れて、内側すら貪る暴力的なキス
「んーーーーーっ!?っーーーーー♡」
油断した一瞬にねじ込まれた、強力な快楽に少しだけ抵抗するユウカ。
けれど、その抵抗も彼女の体を蹂躙するキスの気持ちよさにどんどん弱まっていく。
「ーーーーー♡はぁ……♡」
「どうだった?」
二十秒。
さっきの初めてのキスを塗り替えるのに十分な時間のキスは、初めてを終えたばかりの少女の頭をぐちゃぐちゃにするのに充分だったみたい。
私を見上げるとろんとした表情は、もう完全に女の子の瞳だった