あるちゃんVSアルちゃん*てらー

あるちゃんVSアルちゃん*てらー


「っ……」


彼女からの攻撃が何度も体を掠める。


それは、運命か。

あるいは、偶然か。


あれは私だ。


何故だかわからないけれど、それでも、私だと気が付けた。


その力は、苛烈。

近づけばショットガンによる足が竦むような火力を浴びせられる。


私の射程ではない位置。


けれど、離れるわけにはいかなかった。

離れれば、私の距離ではあるけれど、それは同時に相手の距離。


どうしてか、彼女の力は私よりも一段も、二段も上。


それでも今戦いになっているのは、彼女が冷静でないから。

そして、彼女が繰り出す戦術を私がよく知っているから。


うわごとのように、【私】は言葉を繰り返す。


無価値だと。壊れてしまえと。

その度に放たれる攻撃に、体には数えきれないほどの裂傷が走る。


だけど、止まれない。

壊れてあげるわけにはいかない。


彼女の身に、何が起こったのかは分からない。

けれど、少なくとも、どうしてそうなったのかは、あの姿を見ればわかる。


なら、なおのこと。


「私が負けるわけにはいかないでしょ!」


一息にその場から距離を取る。

その瞬間、彼女の周囲には見覚えのある。

けれど、異常なほどの数の爆弾が仕掛けられる。


もう、彼女には近づけない。


そんな獲物を、ただ、一方的に嬲るだけ。


きっと『私』は笑ってる。

飛んでくる一撃は、私の銃とは威力が違う。


たった一撃。たったの一撃でももらえば、私の心臓は打ち抜かれる。


けれど、この状況でいい。


物陰に隠れ、タイミングを待つ。

弾丸の威力は、それだけで、私から安全地帯を奪っていく。

一呼吸するたびに、戦場は爆発によって削られて、残っている防壁は、背中に背負った一枚だけ。


覚悟は決まった。


最後の銃声が、響いた瞬間、私は物陰から飛び出して、【前へと飛び込む】


笑い声がする。

破れかぶれか、と。


そして、案の定、私の脚はあの子の爆弾を踏み抜いて体ごと吹き飛ぶ。

脚が焼ける痛み。けれど十分。


「違うわ……これがアウトローでしょ?」


痛いのは、想定内。

私の体は、爆発に巻き込まれてボロボロになって、それでも、『私』への距離を一気に詰める。


あの『私』には想定外だったのか、あの子の武器を引き出すのに、一瞬。

ほんの一瞬だけ遅れてしまった。


「これで、終わりよ」


銃声とともに放たれた一撃は、すべてを無価値と断じた彼女にとって、もはやどうでもよくなっていた『心臓(そこ)』へとあっさりと吸い込まれた。

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