ありがとう

ありがとう



「エイジ!また、そんな高い木に登って…それじゃ危ないよ?」

今度は、俺が叱られる側になるなんて人生分からないもんだな。お前の行動を真似て高所から天空を眺めることで、少し自分の為だけの欲望に従うことが俺の日課になりつつある。

「平気だよー」

「そんなことを言ってさ。この前ヘビ見てエイジ、木から落っこちたよね」

「アハハハ、分かった。よっこらしょ」

「家まで一緒に帰ろ!今日までは泊まるんでしょ?鳥の王様の話もっと聞きたい!」

「じゃあ、帰り道歩きながら話そうか」

「やったー!」

この子はほんの少しだけアンクに似てる。いや、性格じゃなくて見た目。特に目元のまつ毛辺りが。アイツも普段の態度は別として笑い顔は案外カワイイから。

……強い湿風が右の方角からブワッと吹き、唇が妙に湿り、頬に柔らかな接吻が施された気がする。

「ん?さっきまで無風だったのに…」

「鳥の王様がきっと拗ねたんだよ」

風にクスクシエに居候していた頃の匂いが混じり、鼻腔をくすぐる。

「王様なのに、せこいな」

「ホントにそうだよ。欲深くて無愛想なんだから」

会いたいと願う気持ちを抱えた俺が言えたことじゃないか。隣と繋ぎあった手を離さずに青天井を仰ぎ見る。



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