あまね、夢のような誕生日

あまね、夢のような誕生日

モテパニ作者

『あまね(ちゃん)(さん)誕生日おめでとー!』

あまね「ありがとうみんな」

11月24日この日は菓彩あまねの誕生日。

それを祝うためあまねの友人達が集まっていた。

ゆあん「うむ!じつにめでたき日だ!」

みつき「みんなも目一杯楽しんでいってね」

そしてそれを主催するのはあまねの兄ゆあんとみつき。

もえ「それにしても驚き、あまねが私が知らないうちにこんなに友達増えてるなんて」

あまね「すまない。もえにも紹介できればよかったんだが、なかなかタイミングがなくてな」

彼女は山倉もえ。

あまねの親友であり、あまねが生徒会長の時副会長として支えた無二の相棒でもある女子だ。

プリキュアと関係がないためプリキュア関係の付き合いには顔を見せないが、誕生日というイベントなら話は別である。

あまね「そういえばみつき兄さん、お父さんとお母さんは?」

みつき「若い子たちに混ざるのもってことで出かけてるよ」

あまね「そうか…遠慮させてしまったな」

ゆあん「案ずるなあまねよ!夜は家族5人で祝う会も予定している!」

みつき「さすがに今やってるものほど豪華ではないけどね」

それを聞いて顔を綻ばせるあまね。

こういった友人達を招く会もいいが、家族とともに祝う事もしたい年頃の女の子であった。

はな「あまねちゃん!誕生日おめでとう!」

あまね「はな、きみも来ていたのか。…という事は品田は」

あまねは周りを見渡す。

すると拓海は、いた。

あまね「そうか、はなもとうとう品田と対面したか」

はな「うん!さあやちゃんが夢中になるのもわかるくらいいい男の子だったね。あまねちゃんもきっかけを作ってくれてありがとう!」

どうやら拓海とはなはすれ違いの果てに遂に会えたらしい。

むしろ今まで会えなかったのが不思議なのだからこういう事もあるだろう。

拓海「菓彩、誕生日おめでとう」

あまね「品田もよく来てくれた。今日は私がもてなされる側だが、今後も品田にはいろいろなイベントに誘ってやろう。覚悟しておけ」

拓海「肝に銘じておくよ。…ははっ、やっぱり俺はそんな菓彩がいいんだ」

あまね「…品田?」

拓海の様子がなんだかおかしい。

普段見せないような顔になる。

拓海「この場を借りて言わせてくれ。俺は菓彩が好きだ」

あまね「…………はぁっ!?」

突然の事態に狼狽するあまね、当然ながら周りもざわつく。

あまね「どういう事だいきなり!?」

拓海「確かにいきなりかもな。けど俺はなにかに後押しされなきゃこういう事言えないから、今日しかないと思ったから言わせてもらった」

あまね「な…あ…」

真っ直ぐな拓海の台詞になおも押されるあまね。

僅かに取り戻した余裕で真っ先ゆいを見る。

ゆい「拓海、あまねちゃんを好きだったんだ。ちょっと寂しいけどあまねちゃんなら」

あまね「ゆい!?」

ゆいはやや顔を暗くしつつもその事態を受け入れていた。

あまね「(違うだろうゆい!きみは普段興味なさそうにしながらも誰よりも品田を想っているはずだろう!?他の者は…)」

あまねは他も見渡す。

ソラ「拓海さん、あまねさんを…悔しいですけど応援するしかありません!」

のどか「うん。邪魔しちゃいけないよね」

拓海に好意を持つ者達が皆その事態を受け入れ始めていた。

ソラやのどか以外も概ねこんな反応だ。

あまね「(ダークドリーム、きみはどうだ?家族同然の品田がこんな事を言ってたらどう思う!?)」

ダークドリーム「あまねのお兄さん、ケーキってまだ?」

ゆあん「すまん!しばし待ってくれ!」

ダークドリーム「早く食べたいなぁ…」

あまね「(きみはもう少し興味を持て!)」

拓海「菓彩返事を聞かせてくれ」

あまね「そ、それは…」

あまねは言葉につまる。

どう返事をすればいいか、いや、自分はどうしたいか。

そんな思考の中あまねの視界は彼女を捉える。

はな「まさかこんな場面に立ち合っちゃうなんて!こんな時こそ応援しなきゃ!フレ!フレ!拓海くん!」

そうだ、彼女がいるのだ。

理由はわからないが拓海と決して会えないはずの彼女が今日に限って何事もなく拓海と出会えていること、そもそも会えない理由の方がわからなかったために特に気にしなかったが、こんな突拍子もない状況が重なれば疑問に転じる。

あまね「(そうか、これは夢だ)」

あまねは理解する。

これは自分の見ている夢だと。

つまりはこの状況、あまねが心のどこかで望んでいるのだろうか?

あまね「…」

拓海「菓彩?」

あまねは深く考え込む。

この状況、夢とわかった上でどうするか…

あまね「…品田」

拓海「ああ、なんだ?」

あまねの呼びかけに優しい声色で応える拓海、そしてその表情も見た事が無いのに知っている。あまねが夢想した顔だった。

そんな夢想をここでなら叶えてもいい。

あまねはそんな免罪符を…

あまね「…きみが告白するのは、私ではない」

きっぱりと破り捨てた。

〜〜〜

あまねは目を覚ます。やはり夢だったようだ。

どうやらまだ普段起きる時間より早いようだ。

あまね「あんな夢を見てしまうとは…」

己を戒めながらあまねは再び眠りについた。

〜〜〜

ナルシストルー「ふん、夢くらい好きにやればいいだろうに」

その様子を家の外でナルシストルーが確認していた。

実はあの夢はあまねが一人で見たものではなくナルシストルーの発明によって見せられていたもの。

はなが夢にいた事も夢だと気づかせて好きにさせるためだったというのに。

ナルシストルー「この俺様に無駄な労力を使わせおって」

ナルシストルーは少し拗ねた口調でその場を去った。

〜〜〜

『あまね(ちゃん)(さん)誕生日おめでとー!』

そして日が明けた翌日本当のパーティが行われる。

兄が主催して、親友のもえもいて、プリキュアのみんなや拓海もいる。

夢と似たシチュエーション。

しかし異なる部分も。

あまね「さあや、はなは来ているのか?」

さあや「本人は来たがってたんだけど、また来れなくなっちゃったみたい」

あまね「そうか…」

はなには申し訳ないが少し安心する。

やはりこれが普通なようだ。

拓海「菓彩、誕生日おめでとう」

あまね「ああ、ありがとう品田」

そして拓海の様子もいつもと変わらない。

あまね「(少し試すか)」

拓海「菓彩?」

あまね「いやなに、とても盛り上がっているが、もしここできみが私に愛を囁いてくれればもっと盛り上がるのではないか?」

拓海「はぁっ!?何言ってんだよ!」

拓海の反応もいつも通り、あまねは安心する。

ソラ「あまねさん!そんな事を軽々しくするのはどうかと!」

のどか「そ、そうだよ!そんな見せ物みたいなのはだめだよ!」

ゆい「拓海、あまねちゃんに好きって言うの?」

拓海「言わねーよ!」

ゆい「だよね」

そして周りの反応も。

ダークドリーム「あまねのお兄さん、ケーキってまだなの?」

ゆあん「もうしばし待ってくれ!」

ダークドリーム「楽しみだなぁ」

あまね「(そこは変わらないのか…)」

いろいろありながらもパーティは盛り上がる。

そして少し落ち着いたあたりで。

やよい「あまねちゃん、ちょっといい?」

あまね「どうかしたかやよい?」

やよい「これ、ナルシストルーさんからあまねちゃんにって」

やよいから差し出されたのは手紙だった。

開いて読んでみると。

ナルシストルー『拝啓ジェントルーへ、今日は貴様の誕生日らしいな。おかげで俺様も休暇を楽しめている、そこだけは感謝しておいてやろう。ではまたな。貴様の愛しい天才より』

あまね「…なんだこの手紙は。あ、マリちゃんナルシストルーは今どうしてる?」

ローズマリー「え?ああ、ナルシストルー…あまねにこんな手紙を送ってたのね。あいつなら数日前にあまねに誕生日のプレゼントを用意するとか言ってきたから特別に期限付きで仮釈放したんだけど、まさかここに来ないなんてね…」

あまね「そういう事か、まああいつが素直に祝ってくれる方が気味が悪いから構わないさ」

〜〜〜

ナルシストルー「悪かったな気味が悪くて」

パーティ会場の外でそんなことを言うナルシストルー。

その言葉を最後に彼はその場を去った。

彼のいた場所には彼がクッキングダムで育てたりんごが置かれていた。


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