あにまんまん「きみ、ネットで管理人ちゃんのこと馬鹿にしてたゲー?」

あにまんまん「きみ、ネットで管理人ちゃんのこと馬鹿にしてたゲー?」


「管理人ちゃんもあれで色々と頑張ってるんだし、あまりひどいこと言わないであげてほしいゲー」


 と、紫のバケモノが俺の家にやってきたのが今日の朝。


「でも、確かに利用者の不満の声は貴重なご意見だゲー。管理人ちゃんもそれはわかってるし、

生の声を聞かせてほしいとも言ってたゲー。だからちょっと来てほしいゲー」


 そのバケモノによって強引に連れ出され、ピンク髪の女が待つ話し合いの席とやらに連れ込まれた後。


「急なことでごめんなさい。でも、どうせ年中ヒマしてるニートだしいいですよね?」

「管理人ちゃん、そういうこと言っちゃ駄目だゲー。仲良くするゲー……ふたりとも、良い機会だからちゃんとお話するゲー」


 待っていたピンク髪に失礼な口を利かれ、紫のバケモノが退室してから。


「失礼しました……えっと、お茶でも飲みながらお話しましょうか」


 ピンク髪がそう言って、俺が少し不機嫌になりつつもお茶を飲んだ直後。


 ――どうやら一服盛られたらしく、俺はそこで意識を失った。


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 気が付くと、俺は知らない部屋にいた。


 意識を失う直前までいたのとは別の部屋だ。大きなベッドの上で、大の字に拘束されている。着ていた衣服も奪われて、肌を隠すものは何もない。おまけに、盛られた薬のせいなのか身体の様子もおかしかった。


 異常事態なわりに、パニックには陥らずに済んでいるが。陥っていないだけで特に何が好転するわけでもない。とにかく状況を把握しようと、俺は起きたばかりの頭を必死に働かせる。


 と、そこに横から声をかけられた。


「おはようございます……と言っても、もう外は暗いんですが。気分はどうですか?」

「……最悪だよ」


 声の主は、ベッドの横で椅子に座っていたピンク髪。俺をこんな状態にした犯人だ。


「そう答えられるくらいには元気なんですね。安心しました。動転して喚かないのも好都合です」


 気分は最悪だと言った俺とは対照的に、ピンク髪はどこか機嫌が良さそうに言う。裸で拘束された俺とは対照的に、服を着た自由な姿で。ピンク髪は、その差異に象徴される彼我の立場の優劣を、己の絶対的な優位を確信している。


 対する俺は、逆に劣位を意識せずにはいられない。が、それを態度に表せばピンク髪を余計に喜ばせそうだから態度には出せない。こんな奴を喜ばせてなるものかと、努めて平静を装う。


 が、ピンク髪はよほど機嫌が良いのか、俺が黙っていると聞いてもいないのに状況を説明しだした。


 俺が掲示板でピンク髪への不満を愚痴っていたのが癇に障ったこと。何か報復してやりたいと思ったこと。それを実行した結果こうして俺を裸に剥いて拘束していること。そういった犯罪的な内容を、ピンク髪は得意げに口にした。


 そして、その一環として怪しいクスリで俺を女に変えてしまったということも。


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「私としても、元のあなたみたいな冴えないおじさんより女の子相手のほうがいいですし。

それに、あなたも女の子になれて嬉しいでしょう? TSしたいとか何とか、よく掲示板で書いてましたもんね」


 性別が変わった。そんな現実味のない状況に俺が何も言えずにいると、ピンク髪が鏡を取り出して俺に向けながら続ける。


「ほら、見てください。元の顔とは全然違う可愛らしい顔。薄かった髪も肩口まで伸びて、しかも艶々のサラサラですよ。

髪とは反対に髭やそれ以外の美少女には似合わないムダ毛なんて全ておさらばですし、もちろん肌の状態も最高にすべすべ。

スタイルだって、まあ私ほど胸はありませんがバランスがとれた良いスタイルです。もとがだらしない体系の冴えないおじさんとは信じられません。

見た目はもう完全に『受け』がよく似合うタイプの美少女ですね」


 もとの外見を馬鹿にされるのが不愉快ではあるものの、言っていることは紛れもない事実だ。


 鏡に映る俺の姿は、確かにもとの俺からは想像もできない美少女に変わっている。目の前のピンク髪ほど胸はないが、確かな曲線美を描いている。何なら、煽情的といってもいいだろう。相手が異性でも同性でも、とにかく劣情を煽って『受け』にされてしまうのも間違いない。


 が、たとえ事実であろうとも言われっぱなしは面白くない。TS美少女になりたいという妄想が叶って内心喜んでしまっている自分にも腹が立つ。何か言いたい、言い返してやりたいと、俺は頭を回す。


 結果、思いついたことがひとつ。得意げに喋っていたピンク髪が触れなかった部分に痛いところがあるのではないかという発想。俺はうまくカウンターを決めるつもりで、その点に突っ込んだ。


 最初に俺をお前のもとに連れてきた紫のバケモノ――あにまんまんもグルなのか、と。


 しかし、結論から言えばそれは否。的外れどころか、上機嫌だったはずのピンク髪を怒らせる藪蛇だった。


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「あにまんまんがわたしとグル? そんなわけないでしょう。あの子がわたしなんかの報復なんて悪事を知って協力すると思ったんですか?

あんなに良い子が? いったいどうしてそんな発想をするのか……とんだお馬鹿さんだったようですね」


 紫のバケモノを馬鹿にされたと感じて怒ったのか、ピンク髪の口は止まらない。


「だいたい、一目見ればあの子が善良であることくらいわかって当然でしょう。全体的に丸みを帯びた可愛いフォルム。

可愛らしさとは正反対に格好良さを表現しつつも決して総合的な美のバランスを崩さない3本の角。

風水において3は発展を意味する数字ですが、あの子と良い関係を築くことができればその通り人生が良い方向に発展していくことは間違いありません。

それに、角の色である黄色も風水的には非常に良いものです。金運がよく言われますが、黄色は土の気、健康運なども表しますからね。

即ち、あの子は関わった者に幸運をもたらす素晴らしい存在なのです。それを悪いように考えることなどあり得ません。

ああ、もちろん風水や運気といった部分でもあの子は素敵ですよ。あなたのようなお馬鹿さん以外なら常識的にわかっていることですが。

たとえば身体は高貴なイメージのある紫で、これは実際にあの子の気品ある尊い内面の表れに他なりません。

それでいて、高貴すぎるせいで近寄りがたさを感じてしまいそうなところを当事者の態度が親しみやすくさせています。

今言った通り、いえ今言った以上にあの子は内面も外見も素晴らしすぎてこの程度ではとても表現しきれないくらいですが……

あの子の内面的な善性、外見的な美しさを表すにはこの世すべての言葉を費やしても不可能ですし、これ以上はやめておきましょう。

とにかく、あの子がわたしとグルなんてことはありません」


 早口で紫のバケモノを賞賛するピンク髪に圧倒され、逆に俺は口を噤む。失言だった。そう後悔するが、覆水は盆に返らない。


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 そして、俺は失言を許されずに罰を受けることとなった。


「そんな馬鹿なことを言う口は、ちょっとお仕置きが必要ですね」

「は……あっ!?」


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 自分の唇を、ピンク髪の唇で塞がれた。拘束された身体に覆い被さられて、不意打ちでキスされた。


 単に唇同士で触れ合うものとは違う深いキス。不意打ちに驚いて思わず開いた口の中に、ピンク髪の舌が押し入ってくる。逃げられないようピンク髪に顎をホールドされ、入ってきた舌を噛んで撃退することもできない。


 それは、お仕置きと呼ぶにはあまりにも過激な行為。最早、凌辱と呼ぶほうが相応しいほどのものだ。


 押し入ってきたピンク髪の舌に口内を舐られる。俺自身の舌は怯えて奥に引っ込み何もできない。何もできないままピンク髪の舌に蹂躙され、口内を征服されていく。


 歯列を奥から手前、手前から奥へとねっとりなぞられて。歯の表も裏も、歯茎にもマーキングするように文字通り唾をつけられて。俺が抵抗できないのをいいことに、口内の隅々まで支配権を上書きされる。


 更に、怯えて引っ込んでいた舌をも絡め取られて。まさに屈辱だ。


 本来はものを味わうためにある器官を逆に味わわれる倒錯感。恥ずかしくて嫌だと思うのに何ひとつ抗えない無力感。無理矢理こんなことをされている現実への絶望感。


 そして、確かに感じさせられてしまう快感。気持ち良いことに、気持ち良くさせられる辱めに俺は屈している。


 屈しているから、口内を舐られる以上のことにも逆らえない。


 絡めとられた舌を伝わせて唾液を飲まされることにもだ。口の中はおろか腹の奥にまでマーキングしようという行為に抗えず、注がれるがままに唾液を飲まされる。熱い。注がれた唾液が喉を通って胃に落ちるのがはっきりわかる。


 もう、俺の身体なのに俺のものじゃない。俺の身体は目の前の相手のもの。それが悔しくて認められないから拒むようにぎゅっと目を瞑るが、視界が封じられた分だけ他の感覚が鋭くなり却ってものにされていくのを自覚してしまう。


 結果は――絶頂。屈辱と快感に打ちのめされ、俺は女の身体でその頂へと押し上げられた。


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 ピンク髪が果てた俺から唇を離し、絡めあっていたふたりの舌に淫靡な橋がかかる。橋が重力に引かれ、俺の口の端に落ちる。俺はそんな程度の刺激にさえ思わず声を漏らし、そんな俺を見てピンク髪が笑う。


「ふふっ。馬鹿なことを言う悪い口でも、味は良かったですよ。ご馳走様です」


 嗜虐的な微笑。俺という獲物を捕らえて、味見で気を良くした捕食者の顔。ピンク髪は俺にそれを向けて、更に言葉を続ける。


 俺が果てた事実なんてお見通しだと言わんばかりに。身体のみならず心をも嬲るように。妖しい表情で、言葉で俺を責める。


「女の子の身体って気持ち良いでしょう? キスひとつでそんなに乱れちゃうくらい。気持ち良過ぎておかしくなっちゃうくらいに。ねえ?」


 対する俺は、おかしくなんかなっていないと虚勢を張ることもできない。酸素を求めて喘ぎ、その無様な姿で俺自身の意に反してピンク髪の言葉を肯定させられる。


 いや。肯定に止まらず、続く言葉で期待させられてしまう体たらくだ。


「これでもっとたくさんキスされちゃったら、自分がどうなっちゃうと思います? キス以外されない代わりに、徹底的にキスされちゃったら。もっとおかしくなれちゃうと思いませんか?」


 言われて、つい想像してしまう。今のキスも充分凄かったというのに、もっとされたらどうなるのか。まずいと思いながら、想像することを止められない。


 果てた直後の敏感な状態で、止められない自身の想像に嬲られてまた昂ぶり果てる。身体がびくんと小さく跳ね、意図せずして果てた事実を告白する。


「随分と期待されてるようですね。これはしっかり応えてあげないと……」

「やっ、ま、待っ、あ……っ!?」


 と、ピンク髪は俺自身の制止に聞く耳を持たず更なるキスの攻勢に出た。


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「安心してください。あにまん掲示板は18禁NGですし、その管理人である私も決して18禁になるような真似はしません。

あくまでもあなたにするのはキスだけです。キスだけですから、壊れちゃうことはありませんよ」


 攻勢の直前にそう言われたが、はっきり言って信じられない。正直、壊されてしまうと思わされるほどの凌辱だ。


 まずは頬へのキス。次いで、口の端にキス。先程そこに落ちた唾液を舐め啜られた後、今度は首筋にキス。更には鎖骨、胸、鳩尾、脇腹と、徐々に下りながら唇の跡をつけられていく。俺の心も身体もその刺激に耐えられず、肌に唇を重ねられる度に果てて押し上げられた頂から降りてくることができない。


 最も敏感な場所は焦らすように避けられたが。そこを避けられても、昂りきった俺は太腿や膝、脛や脹脛、足先や足裏へのキスでさえ簡単に果てる体たらくだ。


「う、あぁ……っ」


 あまりにも気持ち良すぎて、思わず甘い声が漏れる。恥ずかしいから黙っていたいと思っても、暴力的なキスの嵐に翻弄されて口を閉ざすこともままならない。下手をすれば、甘い声よりも恥ずかしい言葉を口にしてしまいそうになっている。


 欲しい。ください。さっき避けた場所にもキスされたいです。焦らさないで。意地悪しないで。そこにもどうかキスをお願いします。屈辱と快感に打ちのめされて堕とされかけた心と身体が、そんなことを求めてしまっている。


 それを知られたくなくて、必死に隠すけど。本当に隠しきれているかというと、生憎と自信はない。


 いや。自信も何も、完全に見破られている。


「ふふっ。心配しなくても、ちゃんとそこにもキスしてあげますよ。今日はキスしかしてあげませんけど、代わりにキスならいくらでもしてあげますからね」

「や……だ、だめ……」

「駄目、ですか? そんな物欲しそうな顔してちゃ説得力ありませんよ。何ならまた鏡を見せてあげましょうか? 自分が今どんな顔してるか見てみます?」

「やだ……いやぁ」


 言われて、弱々しく首を振る。それでも、ピンク髪は止まってくれない。鏡で俺に自分の顔を見せつけるのはやめたものの、キスはやめようとせずそこに顔を寄せてくる。


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顔を寄せてきたピンク髪の吐息がかかる。すっかり敏感になった俺の身体は、その吐息にさえ反応してしまう。拒む理性はもうほとんどぐずぐずに蕩けて、本能が歓喜することを抑えられない。


「可愛いですね。それに、とってもいやらしい。こんなに可愛くていやらしいところにキスをおねだりされたら、私も止まれません」

「あ、あっ、あ……っ!」


 吹きかけられる熱い吐息に身体が反応する。劣情をぶつけてくる言葉に心も反応させられる。気持ち良い。嬉しい。来て。早く。来て。来て。来て。俺自身の内側から、ピンク髪を強く求める想いが湧く。


 ピンク髪はそんな俺に、そんな俺のはしたなく欲しがる場所に唇を近付けて――


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