あとの祭り
どうしてこんなことに。後悔しても何してもダメ、手遅れ、助かる見込みはない。……なんて絶望的で、最悪。錆丸はもう頭を抱える気力もなく部屋の隅に座り込んだ。あとの祭りとはこのことか、しかし、一緒に部屋に閉じ込められた後輩からすればきっと祭りはこれから。
ここは『セックスしないと出られない部屋』。そっけない部屋に堂々と置かれた大きなベッドと、サイドチェストの中身はおおよそ真っ昼間から口には出せないような物ばかり。とち狂った錬金術師がアカデミー内に仕掛けたとか噂があるが、ふざけるのも大概にしてほしい。
「ここが、例の部屋……!」
ついに見つけたと鼻息荒くした後輩はベッドで跳ねている。ここに2人で閉じ込められるに至ったのは正直なとこ彼女のせいだ。この部屋の噂……本当のところ絶対彼女の耳には入れたくなかった、しかし先輩ズや先生の尽力叶わずどこからか情報を得たりんねはついに『セックスしないと出られない部屋』を突き止めてしまったというわけだ。
〈その頑張りもっと別のとこに使ってくれねぇかな……〉
アイザックも思わずこぼす、恐ろしきかな思春期のパワー。いや思春期の誰しもがこんなちょっと頭がアレになるわけじゃない。錆丸だって否定したい。
「わっすご〜い!こんな、うっわ……やば……人類の宝庫だよ……!!」
変態部屋が人類の宝庫であってたまるか。せいぜいがオモチャ箱だ、けっして性具のことを指してるわけじゃないけれど。違うけど。
「先輩! どれからいきましょう!」
「えっ………」
「こんなにあるんだからヤらないと!」
〈絶対イヤだわ〉
「まあまあ、遠慮せずに」
遠慮してない、絶対にしてない。そうは言っても頭が思春期色の後輩は聞いちゃくれない。目の前に人参ぶら下げた馬、または背中にエンジンついてんのかってぐらい一直線。
さあほら、と。笑顔と両手にトンデモナイ物をお持ちでじりじりと錆丸へ距離を詰めてくる。
「ほら! これなんかぐにぐにしてすごいですよ!」
〈なんだそれキモッ!?〉
盾のように構えたタブレットは簡単に取っ払われてりんねの手の中、電源ボタンを切られてしまう。
「あっ……」
「ごめんアイザック、AIも交えた3Pもまた考えとくから」
そんなもの考えなくていい、聞こえていたらアイザックはそう叫んでいただろう。だって錆丸も内心そう思ったのだから。本当にもうしわけなさそうなりんねの両手でオモチャが動き出す。
「でも大丈夫です! 絶対こっちは気持ちいいですから!」
「ゃ、優しくして……?」