No Title
私は今日からトレセン学園の生徒。お父さんとお母さんに背中を押されて、勇気をだして受験した冬が懐かしい。
『あなたは優しい子だから直ぐにお友達が出来るはずだわ』
『エフならルームメイトになった娘とも仲良くなれるな!父さんも母さんも、お前のこと応援してるぞ!』
「…よしっ」
お父さん、お母さん。私はたくさんの人と仲良くなって、たくさんトレーニングして強くなって、2人の誇りになれるような立派なU娘になってみせます…!
トレセン学園は2人1部屋の寮制。お父さんが話していたから覚えている。私の所属は美浦寮。お母さんの知り合いだというヒシアマゾンさんが寮長の大きな建物だ。
「お、アンタがハートさんとこの」
「はい。エフフォーリアと言います。今日からよろしくお願いします」
「そんな堅苦しくしなくて大丈夫だよ!まぁ真面目なのはいい事だけどね!アタシはヒシアマゾンだ。とりあえずアンタの部屋に案内しようかね!ルームメイトは栗東寮にいるお姉さんに挨拶してから来るらしいよ」
ルームメイト。その言葉を聞いて少し自分の体がざわつく感覚。
どんな方なんだろう。お母さんのような優しい方?お父さんのような気さくでムードメーカーな方?楽しみでもありながら、ちゃんと話せるだろうかという不安を感じていた。
(ど、どうすればいいんでしょう)
私は、初めの最大の壁に直面していた。
ルームメイトになる方と、どうやったらお友達になれますか…?
そして部屋の中、現在に至る。アマゾンさんが言うには、もう少しでここに来るらしい。
…落ち着いてエフフォーリア。私はここまでたくさんのイメージトレーニングをしてきた。とりあえず自分の名前と誕生日、好きな食べ物…
とその時、ガチャッとドアの開く音がした。来た、この瞬間。私は即座に振り向いて口を開いた。
「は、初めまして!今日からあなたのルームメイトになりますエフフォーリアです!えっと、た、誕生日は3月10日で、好きな食べ物はおにぎりと駄菓子と…あと、」
「とりあえず一旦落ち着こう?…ね?」
「…あっ」
やってしまった…!!
私のバカ!おたんこにんじん!相手の方びっくりされてるじゃないですか!
「ご、ごめんなさい急に!こういったこと経験したこと無かったので緊張してて…」
「…あはは!良かった!怖い人じゃなかった」
「え?」
私が自分のとった行動に反省会を始めた瞬間、部屋に入ってきたU娘さんはケラケラと笑った。
「いや~ほら、ルームメイトって言っても、絶対同い年の娘と部屋組めるって訳でもないでしょ?だからこわい先輩とかだったらどうしよう~って思ったんだ」
そう言って、U娘さんは持っていたスクールバッグと紙袋を床に下ろす。おそらく、紙袋は栗東寮にいるお姉さんからのものだろう。
「君のこと入学式で見たし、同い年…だよね?僕はタイトルホルダー。改めてよろしくね、エフちゃん」
「は、はいっ!よろしくお願いします!…た、タイトルホルダーさん!」
そんなに緊張しなくていいのに、そう言ってまた、U娘さん_タイトルホルダーさんはケラケラ笑うのだった。
私は今日からトレセン学園の生徒。ルームメイトのタイトルホルダーさんは明るくて優しくて、一緒に仲良く頑張っていけそうです。