透明人間 第3話
TODA RABA2001年9月、持ち主はテレビを見ていた。
「緊急中継です」
テレビに映し出されたのは、旅客機がビルに追突するシーン。
「なにこれ」
「映画じゃない?」
持ち主の祖父はのんきなことを言っていたので、持ち主は安心して寝た。
「昨日のあれ、見た?」
次の日学校へ行くと、友達の話題はその事件の事でもちきりだった。
「おはよう」
さくらが遅刻ギリギリになってようやく教室に入ってくる。
「おはよう」
持ち主とさくらは付き合っていたが、学校ではあんまり仲良くしない様にしていた。
放課後、戸田くんと合流してから、持ち主とさくらはあの公園に行った。
「これって、世界が終わるメッセージじゃないかしら」
さくらは深刻な顔で言う。戸田くんも便乗していろんな憶測を話した。
持ち主と戸田くんは何でも話せる親友になっていた。それでも、持ち主は一人で抱えていた何かがあったのかもしれない。
「ごめん、ちょっと帰るわ」
持ち主は自宅に帰り、そして家にあったすべての薬を開け、ビールで飲んだ。
この時、持ち主が何を考えていたのか、それは持ち主にしか分からない。深夜に激しい頭痛で目が覚め、そして再び眠り、目が覚めた時には持ち主の意識は消滅していた。
そして代わりに宇宙の意識体が入り込んだ。
同時に概念を整理するAも出現した。
日常生活に適応するBも出現した。
しばらくはAが生活を担当していたので、突然無口になったAにさくらと戸田くんは戸惑ったらしい。二人は何が起きたのか、分かっていなかった。そしてAも分かっていなかった。
そのうちにBが生活を担当することになり、Bは日常生活を取り戻していった。
「おはよう」
さくらが言って、Aの方を見る。
「おはよう」
AはあわててBに代わり、そして日常会話をやり取りする。