透明人間 第2話
TODA RABA1999年7月、僕らは夜にこっそり家をぬけだして、3人で公園に集まっていた。
「今日で地球も最後だね」
「隕石が降ってくるのかなぁ」
「大地震が起こるって聞いた」
さくらが地球最後の日に天体観測をしようと言い出したのがきっかけで、3人はジャングルジムにつかまりながら、こうして空を眺めている。
そこにあるのは薄くもやのかかったいつもの空で、何も変わり映えしなかった。今から何かが起きそうな気配はなく、近所のコンビニで買ってきたアイスを食べながら、新しい担任の悪口を言い合った。
「俺の担任、毎日紫の靴履いてくるんだけど、紫は欲求不満の色ですって自分で言ってた」
「あたしたちの担任は口臭がそれはひどいの。生ごみみたい」
3人は同じ中学に進学し、さくらと持ち主は同じクラスだった。
「戸田くんは、部活とかやらないの?」
さくらが聞いて、戸田くんがすこし考えてから言った。
「うちはお父さんがいないから、家の事いろいろやらなくちゃいけないから」
ふいに気まずい沈黙が流れたその時だった。
「ねぇ、あれ、なに」
さくらが急に声をあげたので、持ち主と戸田くんは慌てて空を見上げた。
光が、こちらに近づいて来ていた。次第に大きくなってくるその光は、3人をじっと見ているようだったとさくらは語った。
「どうしよう」
「にげる?」
「大丈夫」
持ち主はその光をじっと見ていた。見つめ合っているような感覚がした。
「これ以上はヤバいよ」
さくらがいって、光から目をそらしたその時だった。
「君たち、なにしてるの?」
懐中電灯を持った警察官が、僕らを照らす。
「天体観測」
戸田くんが言って、にこっと笑ってみせる。
時計は22時を指していた。戸田くんの母親が学校に連絡をしたらしい。
「生徒手帳見せて」
3人は生徒手帳を持っていなかったので、でたらめな名前を言った。
次の日、全員職員室に呼び出された。