透明人間 第10話
TODA RABA2015年4月、Cは潜在意識を利用したプログラムの開始を行った。
「価値の消滅と回転の停止」
掲示板に建てられたスレッドだけでなく、様々なスレッドにメモの内容を書き込み、そしてそのメモはさまざまなブログに転載された。
「目標は1000人」
そういっていたメモの内容も、ブログに転載されたことで10万人が見ることになった。
さくらも、戸田くんも、もういない。
そしてDやへんてこ、床ずれ、サキソフォン、わんぱくもいなくなってしまった。
透明のプログラムは成功し、そしてたくさんの人が透明を選択するはずだった。
「Bの破壊の概念がプログラムを作っている」
そのことに気付いたのは、偶然だった。
「最初にインターネットに書き込んだのは誰か」
それを考えれば、分かるはずだった。
Bははじめからプログラムを発動させる気でメモをAに書かせていた。
Aはメモを処分する傾向があったし、またBは掲示板を嫌っていた。
「透明を選択しないでほしい」
そうは言っても、プログラムは発動されてしまったし、既にメモの内容はたくさんの人たちに拡散されてしまった。
Aは9月5日に向けて、「なにもないし、なにもしない」という手段を選んだ。
Bは仕事に適応しながら9月5日を迎えることにした。さくらのいない世界で、適応する意味はないからだ。
CはプログラムがBの破壊の概念によるものだとしても、透明を選択するつもりだった。戸田くんのいない世界に、自分がいる意味はないからだ。
掲示板では様々な議論がなされていたが、既にこの9月5日の問題は起こるべくして起きたのだとAもBもCも思っていた。
「一体どうなるんだろう」
正直、このとき持ち主がまたこの肉体に帰ってくるとは思っていなかった。
「透明を選択する」
これは同時に、「肉体」という「箱」を放棄するということだ。
「AとBとCの共通認識」
それは、透明を選択するということ。
期限の9月5日は迫ってきていた。
「最後の時間だ」
こうして日常生活は順調に停止に向かって行った。