123

123


視線を下に向けると、ダンデのそこは服越しでも分かるくらいにはっきりと起立していた。ずっしりと質量のあるそれを、早くナカに埋め込んで欲しいのに。


「いれねえの…?」


 ダンデは服を脱ごうとはしなかった。肌を晒してるのはキバナだけで、ダンデはまだTシャツとジャージをしっかりと身に付けていた。

「それは…」

 ダンデが気まずそうに目を逸らす。たったそれだけで、ダンデがこの行為を終わらせようとしていることが窺えた。

「なんでダメ…?」

 まだ全然足りないのに。何回イかされても満足なんて出来なかった。

 ダンデでナカを満たして欲しかった。でもそれは、ダンデが乗り気でなければ意味がない。

 どうして、と呟くと視界が滲んだ。じわりと湧いてきた涙が邪魔をして、ダンデの表情が見えなくなる。

 もしかしたら、引かれてしまったのかもしれない。初めてのくせにこんなに感じて、男のくせにこんなに喘いで、みっともない姿をたくさん見せてしまった。


「オレさまのこと、見損なった…?」


 ずず、と鼻を啜る。涙が頬を伝い、白いシーツを濡らしていく。

 乱れた秘所を隠そうと、細い太腿を擦り合わせた。今さらそんなことをしても遅いのに。


「はじめてなのに、こんなにいやらしい奴…いやだよな…?」


 自分で言っておきながら、本当にその通りだとキバナは落胆した。みっともない姿を少しでも見せたくなくて、ダンデから顔を背け枕に涙を押し付ける。

 嫌ならべつにいれてくれなくてもいい。この先ずっと、嫌いにならないでいてくれるなら。でもそんな保証もないのだから、キバナは怯えてダンデの返事を待つしかなかった。

 疼く身体を慰めながら、独りで眠るところを想像した。とても耐えられる気がしない。

 この飢えを満たしてくれるのは、ダンデの他にいないのに。


「……?」


 無言のまま、視界の端で黒い影が動いた。衣擦れの音が聞こえて視線をやると、ダンデがTシャツを脱ぎ捨てるところだった。

「ダンデ…?」

 たくましい胸筋があらわになる。鍛えられた大人の男の身体にドキリと胸が高鳴り、キバナはそこに釘付けとなった。


「迷っていたんだ」


 ダンデは下衣にも手を付けて、躊躇いもなく下着と共に脱ぎ去った。

「……あ、」

 現れた巨大な肉棒にキバナは息を呑んだ。勃起して予想よりも大きく赤黒く張り出したダンデのそれは、見た目にもなかなか毒々しかった。

 しかしそれを見た瞬間、キバナの後ろはキュンと締まったのだ。

 まるで、早くそれを埋めて欲しいと催促するみたいに。


「今のキミに最後までしていいものか」


 ダンデの目がすっと細められ、獲物を狩る野獣のそれになる。そんな男に見下ろされ、ドキドキと逸りだした胸がきゅんと痛んだ。

 このままでは食べられてしまうのに、頭を占めたのは恐怖よりも圧倒的な期待だった。


「ぅ……」


 ダンデの切っ先がキバナの蕾に押し当てられた。ローションと先走りが混じり合い、ちゅくちゅくと塗り込むように鈴口でキスをされる。

 覆い被さるダンデの下で、キバナの身体は無力だった。言われる前に脚を開き、犯されることを望んでいた。


「キバナ」

「あっ」


 ぐぷ、と先端が押し込まれた。ずっと欲しかったものが与えられ、キバナの媚肉は食むようにしてナカでダンデを咀嚼する。

圧迫感は一瞬だった。ずぶずぶと内壁を押し広げられ、突き上げられる感覚に目眩がした。


「あ゛……っ!!」


 捩じ込まれた長大な雄の主張は、迷うことなくキバナの前立腺を押し上げた。


「う、ぅ゛…っ♡」


 ずん、と重たい痺れに貫かれ、全身に電流が駆け巡る。受け入れた粘膜が轟くように痙攣し、ナカがダンデの形に順応していった。

 キバナの後孔は既に、この規格外の大きさを覚えていた。


「は…♡ぁ、ぁ……♡」


 気付けばキバナは達していた。性器はまた精を吐き出せないまま萎れていて、ぷるぷると下腹部で震えていた。柔らかくなったそれは、突き上げられる度に鈴口から透明の蜜を零していた。


「大丈夫だぜ、キバナ」

「ん、ぅ……♡」


 ダンデが腰を使う度、ずるずると粘膜が擦られて擽ったい。ナカでイくことを覚えた身体はとことん快楽に弱かった。前立腺を絶え間なく刺激され、キバナの身体はびくびくと跳ねた。


「キミの身体がおかしいのは、全部オレのせいだから」


 鋭い視線を感じて見上げれば、ダンデが間近でキバナの顔を覗き込んでいた。後ろの刺激で感じ入る、あられもない表情を見られているのだ。かあっと頬が熱くなり、キバナは両手で顔を隠した。


「オレがキミをそう変えたんだ」


 ダンデがキバナに変えられたように、キバナもまた、ダンデによってその身体を作り替えられていた。

 当たり前といえば当たり前だ。言われて思い知ったのは事実だけど、そんなことは今のキバナにとって最早どうでもよくなっていた。


 だって今、オレさまダンデとセックスしている。


 こんな日がくるなんて思わなかった。

 ダンデに抱いてもらえるなんて夢のようだった。

 それなのに、淫らでふしだらな自分だけがこの状況に相応しくなかった。


「顔を見せてくれ」

「あ……っ!」


 ダンデに腕を掴まれて、顔の横でシーツに縫い止められてしまう。生理的な涙でびしょびしょに濡れたみっともない表情を、ダンデが愛おしげに見下ろしていた。


「や、やだ…っ」

「だめだ」

「ばかっ、見んなよぉ……」


 ぐずるキバナに口付けて、ダンデはキバナの頬をかぷりと食んだ。食べてしまいたいと耳許で囁かれ、イヤイヤと首を横に振る。

 無理やり視線を合わされて、端正なダンデの顔に見蕩れてしまった。快楽に歪めた表情までも格好良くて、対する自分が恥ずかしくなった。


「お、オレさま、ぜったい、へんなかおしてる…っ」

「へんな顔?」

「だって、なんかっ……へん……っ」


 羞恥にぎゅっと目を瞑ると、ダンデがふふっと笑った気がした。


「かわいい顔しか見えないな…」

「そ、そうかな……ぁんっ♡」


 油断したところでトンと奥を突かれ、キバナの口から間抜けな喘ぎ声が漏れる。


「んっ、ん、ぅ、う゛ぁ、あっ」


 断続的に腰を打ちつけられ、息も絶え絶えに嬌声を飛ばす。蕩けきった中を撹拌されて、結合部はぐちゅぐちゅと卑猥な音をたてていた。

 もう恥ずかしくてダンデの顔が見れなくて、ぎゅっと目を瞑っていたら怒られた。


「こら」


 ちゅっと目元に口付けられて、キバナはおずおずと目蓋を持ち上げる。

 すると余裕のない表情のダンデが、焼き切れそうな眼差しをこちらに向けていた。


「ちゃんと目を開けてオレを見ろ」


 ダンデの身体から汗が滴り落ち、キバナの肌に染み込んでいく。


「誰に抱かれているのか、ちゃんと見るんだ」


 目を逸らすことなど出来なかった。

 キバナにはもうダンデしか見えなかった。教え込ませるようにナカを穿たれ、従順な身体は再び高められていく。もう何度目かも分からない絶頂がすぐ近くまで訪れていて、キバナはダンデに縋りついた。


「ダンデ……っ」

「うん……ああもう、かわいいな……っ」


 苛立つような口調とは裏腹に、ダンデは何度も甘やかすようなキスをしてくれた。口唇を割られ、容赦なく唾液を注がれて、蜜を啜るように嚥下する。

 上も下も繋がって、ぐちゃぐちゃになって混ざり合い、このまま溶けてしまいそうだった。


「ふぅ、ぅ、ぅん…っ♡」


 最後まで甘ったれのキバナの身体を、ダンデは強く抱き締めてくれた。

 ぴったりと肌を寄せ合って、角度を変えて口付けを繰り返す。

 ぐっと最奥を貫かれ、キバナは泣きじゃくり悲鳴をあげた。


「ぅあぁっ!♡」

「っ……!」


 ダンデの切っ先が、ぐぽっとキバナの奥の扉をこじ開けた。そのまま奥で欲が弾けて、キバナの腸壁にダンデの精液が叩きつけられる。その灼熱に身を捩り、キバナもまたナカの刺激で達していた。


「ぁ…♡ ぅ、ん…っ♡」


 どくどくと腹の中を濡らす熱のせいで、キバナの興奮はなかなか冷めなかった。ずっとずっと気持ちが良くて、高まった身体が戻ってこない。

 キバナははふはふと呼吸を乱しながら、この期に及んでダンデに抱きつきキスを強請った。

 ダンデが苦笑しながらそれに応えてくれる。

 甘やかすようなキスの間も、キバナのナカはダンデを締め付けて、残った精液を搾り取るように粘膜を轟かせていた。


「責任は取るから、安心してくれ」

「ぁ、ン…♡」


 もう何を言われたのかも分からない。

 とろとろにふやけたキバナの思考は、すべてを知っているダンデと共に快楽の波にさらわれていった

Report Page