暗澹とΣ
僕が金盥でヘディングをしながら唯我独尊を貫いていると、突然空からトーテムポールが降ってきた。
「ゴー・アヘッド」
僕は咄嗟に道を譲ったが、トーテムポールはいきりたって襲いかかってきた。
「こらこら」
僕は慌てて諫めたが、時すでに遅し、という標語を思い浮かべながら、僕はトーテムポールに殺害されてしまった。
「あっちゃー」
監視カメラで一部始終を見ていた係の人たちが、めんどくさそうに僕の死体を回収しにきた。
「たったの4分33秒でしたね」
「あぁ」
「短命だな」
「後ちょっとでクリアできたのにな」
係員たちが僕の死体を回収する様子を僕は部屋の上の方でぼんやりと眺めていた。
「あれ?僕たちって死んだんでしたっけ?」
隣には、まだ自分が生きていると思い込んでいる誰かの意識が浮かんでいる。
「メンデルスゾーンが聴きたいな」
「わかりました」
突然AIのアシスタントが気を利かせてメンデルスゾーンを流し始めた。
「ありがとう」
「いえ、全てはあなたの望みのままに」
「え?」
気がつくと、世界は僕の望む通りになっていた。
そこには何もない。
「あなたは、何を望んだの?」
僕は全てが消滅した透明な世界にぼんやりと浮かんでいた。
「全てが透明になりますように、そう僕は願った」
そう、願いは必ず叶うのだ。