絵が繋いだ出会いの数々

絵が繋いだ出会いの数々

Erika Yoshida


十二月十四日~十五日、私はギルドハウス十日町を目的地に、新潟へ足を運んだ。

事の始まりは、そこから数日前に遡る。


何気なしにネット検索をしていた私は、ふと自分のこれからの人生について考えた。

「自分はこのままでいいのだろうか」

などという深刻な感情ではない。

そんな悩みはとうの昔に振り切っているので、それを私が心配するのは時間の無駄でしかないのだ。模範解答として当てはめるのであれば、「さて、これから何をしようか」である。


趣味は絵を描くこと。

イラストも、漫画も、デッサンも、日本画も、油絵も、水彩画も、何でも好きだ。

幼少期の頃から、最低限でも紙と鉛筆があれば楽しかったし、空想の世界で生きているような子だ、などと、当時通っていた幼稚園の担任に言われたと母から聞いたこともある。アニメを見たり、漫画を読んだりすることは勿論なのだが、自ら話を考えることが何より楽しかった。

それは今でも変わらず、持ち合わせた探究心と上手くマッチしているのかいないのか、物語を創造するにあたって必要な「資料集め」からの「作画」へと繋がっている。


「漫画家 募集」


何気なく調べた先に出てきた結果こそが、ギルドハウス十日町であった。

「漫画家・漫画家の卵を募集、家賃、共益費等無料」そんな魅力的なキャッチコピーに誘われて興味があると伝えると、担当の白濱さんからの連絡が来た。

スカイプで話すか、遊びに来るか、答えは即決だ。仕事の休みも丁度数日後にあったので、遊びに行きますと告げた。直接見た方が分かることも多いからだ。


十二月十三日、京都駅発の夜行バスに揺られること、六時間。流石は新潟、積雪量が他県の比ではない。長岡駅から十日町、そこから更に電車を乗り継ぎ、美佐島駅にやってきた。トンネルの中にある駅は初めてで、創作意欲が膨らんだ。


迎えに来てくれた住人達の車に揺られて、雪道を進むこと数分後、初めましてギルドハウス十日町。

外装は事前に画像で拝見していた通りの古民家で、まるで岐阜の祖父の家に帰って来たかのような感覚になった。中には手作りのロケットストーブと、連ねて置かれた炬燵、各地や各国からやって来たであろうゲスト達の手紙等が貼られてあり、それだけでも温かみが伝わって来る。


朝から何も食べていない私の為にと、白濱さんが朝食を作ってくれた。昨日の残りだというおかずも大変美味しいものだった。ゲストが来たからといって、新しいものだけでなく昨日のものも活用する辺りがゲストを馴染みやすくする一つの良い点なのではないかと思う。

人見知りというものを一度もした事がない私は、距離感が上手く取れずに相手を困らせてしまうこともあった。その為、あまり物言いする事は良くないかもしれないと初めは考えていたのだが、そんな遠慮も取っ払うかのように気さくに話しかけてくれた住人達によって、開始五分と経たないうちにボロが出た。付け加えるのであれば、炬燵の誘惑に負けたのである。


話を続ける内にアニメの話になり、デジモンの映画で盛り上がった。同世代の者なら、多少は反応するであろう。そして、パソコンでデジモン映画鑑賞。昼食として、焼いてくれたホットケーキを食べながら。…はて、私は何をしに来たのだったかな。

ここの住人はマニアックな話が通じる人が多いので、あっという間に夕方になった。実家にいるような安心感は、良い意味で私を駄目にしてくれるらしい。

ゲストを含む数名で温泉に入り、帰宅と同時にギルドハウス十日町の女将さんであるマチコさんと白濱さんが夕食の準備をしていたので、少々ながらお手伝いさせて貰った。大人数での食事は何年振りだろうか、マチコさんの料理は絶品で、体の芯から温まるのを感じたのは久しぶりだったように感じる。


食後は、オーナーのハルさんとギルドハウス十日町の制度について話をした。仕組みについては、他の住人達の欄に詳しく記載されているであろうから、ここでは省略させていただこうと思う。

細かく丁寧に決められているという印象だったが、生活をするにあたってのルールというものは、原則として存在していないことには驚いた。「色んな人がいるからね」、各々の個性を否定せず、肯定して受け入れる姿勢のオーナーが菩薩に見えたのはここだけの話である。ギルドハウス十日町に足を運んだ際は、拝んでおいて損はない筈だ。



翌日は、十日町を案内してくれるとのことで、男だらけの車に揺られてカフェへ向かい、その後は市長さんと合流して食事をし、温泉に入り、土産屋で饅頭や羊羹を御馳走になり、旅館を拝見し、博物館へ行くなど、まだまだ見ていない部分は沢山あるのだろうが、充実した一日を過ごした。

ここでも気付いたことは、ギルドハウス十日町の住人と各店や周囲の人々との繋がりが深く、近いということ。田舎だからという点だけではなく、町全体で交流をしているように感じられた。

冬場は大雪で、お世辞にも暖かいとは言えない町ではあるが、どこかほっこりした気分に浸れるのはこういった人との関わりがあるからなのだろう。


帰りの電車までの間、再びギルドハウス十日町でデジモン映画を鑑賞し、住人の一人であるアイちゃんと共に大号泣した。ティッシュが減るわ減るわ。人前で泣くことも滅多になくなっていたのだが、すっかり馴染んだ私は周囲に遠慮なく涙腺を崩壊させていた。

忘れてはいけない、初対面である。何度も言うが、それだけここの町の人達は優しく、気さくで温かい。とても馴染みやすいのだ。

一泊二日の短い時間で、一緒に映画を見たり、絵を描いたり、話をしたり、観光したりと、住人と一緒に居て感じたことは、誰かと何かをすることはとても安心感があるものだということ。

しかしこのギルドハウス十日町の住人達には、自立心も備わっていると強く感じた。人任せにするだけでなく、率先して行動している。勿論、誰もが初めから出来たわけではないのかもしれないが、ここでの生活で身についたことも多いのではないだろうか。

自分を変えたい、何か新たな発見が欲しい、癒されたい、色んな思いを抱えた人達がいるのだろう。そんなときは、私のこの文に騙されたと思ってくれても構わないので…否、訂正する。やはり、自己責任でよろしく頼む。

何にせよ、一度ギルドハウス十日町へ遊びに行ってほしいと思う。個性豊かな面々が優しく迎え入れてくれることだろう。

そして私も、近いうちにまたひょっこり顔を出しに行こうと思う。


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